(2013/11/29)
楽曲制作を通して、Mixcraftの魅力をお伝えしている本連載。
連載10回目からミックスの説明に入り、ここ数回はイコライザーの解説を行ってきました。
今回からは、イコライザーと同じくらい重要なエフェクト、 “コンプレッサー” について解説を行います。
コンプレッサーはイコライザーと違い、効果が分かりにくいエフェクターです。しかし、楽曲のミックスを行うにあたって、避けては通れないエフェクターです。
この連載ではイコライザーと同様に、コンプレッサーを使用する意味から応用まで、丁寧に解説を行います。Mixcraftを使用している方はもちろん、”コンプレッサーの効果がいまいち分からない”、”オリジナル楽曲の音圧を上げたい”といった方も、是非ご覧下さい。
コンプレッサーとは?
コンプレッサーとは、 “コンプレッサーに入力されたサウンドで、音量が大きい部分だけを小さく(圧縮)し、全体的な音量を増幅する”という働きを持っています。
コンプレッサーに近い働きをするエフェクトとして、 “リミッター” と呼ばれるエフェクトがあります。
リミッターは、“リミッターに入力されたサウンドを、設定した音量レベルを超えないように、音量レベルのピークを抑える(制限する)”という働きを持っています。
このコンプレッサーやリミッターは、 ダイナミクス系エフェクト として分類されており、イコライザーとフィルターの関係性に近いものがあります。
このコンプレッサーの機能についてですが、言葉だけを聞いても、いまいちピンとこないかもしれないので、上記の働きを実践してみます。以下にドラム音源を用意しました。
上の音源は少し極端な例ですが、波形で見ても、音として聴いても、大きい音と小さい音が混在しています。また、音量の差が大きすぎて、気持ちの良いドラムフレーズとは言えません。
それでは、小さい音がはっきり聴こえるように、ミキサーのボリュームで音量を上げてみました。
それが、以下の音源です。
上の音源は、小さい音も聴こえるようになりましたが、大きい音が歪んでしまっています。
それは、ドラム全体の音量を上げたために、元々大きい音がレベルオーバーしてしまうためです。図と波形で説明すると、以下のようになっています。
この問題を解決するためには、大きすぎる音量差を小さくする必要があります。
以下の図のようになるよう、波形を変更したいと思います。
この音量差を調整するエフェクトが、 “コンプレッサー” です。
それでは実際に、コンプレッサーを使用し、音量差を小さくしてみましょう。今回使用するコンプレッサーは、 Acoustica コンプレッサーです。
コンプレッサーの各パラメーター
では、調整前のドラム音源の波形をもう一度見てください。
我々人間が音源を聴いたり、波形を見れば、どの部分が大きい音量になっているのかは、すぐに分かります。
しかしDAWソフトは、自分で音量の大小を判断することが出来ません。そのため、DAWソフトに、 小さい音と大きい音の境目を教えてあげる必要があります。
この音量の大小の境目を設定するのが、コンプレッサーの スレッショルド です。
スレッショルドの値を低くすると、小さい音量でもコンプレッサーは動作し、スレッショルドの値を高くすると、大きい音量のみコンプレッサーは動作します。
スレッショルドは、 コンプレッサーが動作し始めるレベルを決定します。
図にすると、以下のようなイメージです。
スレッショルドで、コンプレッサーの動作し始めるレベルを設定しました。このスレッショルド・レベルを超えた音を、 コンプレッサーは小さく(圧縮)していきます。
では、どのくらい圧縮するか?ということを決めるのが、 レシオ です。
レシオを高くしてくと、音は圧縮する度合いが高くなります。スレッショルド・レベルを超えた音は、レシオで設定した度合いで、音が小さく(圧縮)されます。
スレッショルドとレシオの働きを図にまとめました。
なお、今回のドラム音源には以下のようにスレッショルドとレシオを設定しました。
実際の音も聴いてみましょう。
たしかに、音量の差は小さくなり、音の粒がそろって聴こえるようになりました。
しかし、音量が大きいレベルが圧縮されたことにより、全体的な音量が下がってしまっています。
どこかで音量レベルを上げる必要がありますが、その音量レベルを上げるパラメーターが、 ゲイン です。
ここで抑えていただきたいポイントが、スレッショルドとレシオで音量が揃っていることです。
元々音量が大きい部分が圧縮され、余白が出来たことになります。
その余白が出来た分をゲインで上げることで、結果的に全体的に音量が上がります。
それでは、コンプレッサーで最終調整を行ったドラム音源をお聴きください。
このようにコンプレッサーを使用すると、 ただボリュームを上げただけでは得られない変化をもたらします。
このコンプレッサーを使用することが、 音圧(聴感上の音量)に関わってきます。
次回は、コンプレッサーのパラメーターである”アタック”と”リリース”について説明を行います。それでは!
- 前回記事:EQとフィルターの仕組み
- 次回記事:アタックタイムの設定
投稿者:うえだ
カスタマーサポート担当。
丁寧かつ迅速なサポートを心がけています。
弊社取り扱い製品についてお困りの際はお気軽にご連絡ください。