(2013/11/1)
楽曲制作を通して、Mixcraftの魅力をお伝えしている本連載。
第10回目からミックス編に突入し、前回は、ボリューム調整、パン調整についてご紹介しました。
今回からは、いよいよエフェクターの解説に入っていきます。今回ご紹介するエフェクターは、イコライザーです。
- Mixcraft 6 の連載をはじめから読みたい方はこちら:【目次】Mixcraft 6で音と映像をミックス!
- 関連製品:Mixcraftシリーズ製品情報ページ
- チュートリアル動画:Mixcraft大学 開講中!
イコライザーとは?
イコライザーは、録音、ミックスだけに限らず、iTunesやミニコンポなど、楽曲を再生するソフト・機器にも使用される、まさに音作りの基本とも言えるエフェクターです。英語のスペルがEqualizerのため、略して EQ(イーキュー)と呼ばれたりもします。
その機能は、“ある周波数帯域の音量を上下する”という実にシンプルなもの。しかし、シンプルかつ効果が分かりやすいため、ついつい低域を上げすぎて音がこもってしまったり、高域を上げて耳に痛い音になってしまったりと、ミックスが失敗してしまう危険性を含んでいます。
そこで今回はいきなりイコライザーを使用するのではなく、
- “なぜイコライザーをかけるのか”
- “音と周波数の関係性”
などに焦点を当てて解説していきます。
Mixcraftユーザーの方はもちろんのこと、イコライザーの使用方法にお悩みの方なども、是非ご覧ください。
音と周波数
まずは、音と周波数の関係性から解説します。
音は、空気を振動させ、人間の鼓膜に振動が伝わることにより、人間は音として認識することができます。
この“空気の振動”がポイントで、1秒あたりの振動回数が多いと高い音になり、1秒あたりの振動回数が少ないと、音は低くなります。
周波数(単位はHz)は、1秒あたりのくり返し回数を示すため、1秒あたりの空気の振動回数=音の高さ=周波数と表すことができます。
楽器を演奏する方であれば、ギターのチューナーなどでA(ラの音)=440Hzという表示を見たことはありませんか?
これは、”1秒間に空気が440回振動した音がAの音”ということを表しています。チューナーをA=442Hzに設定し楽器をチューニングすると、A=440Hzでチューニングしたときと比べ、全ての音が若干高くなります。
ヘヴィロックの礎を築いたPANTERAも、あえてA=436Hzに設定し、独特のヘヴィ・サウンドを生み出していました。
それでは次に、楽器と周波数について考えてみましょう。
楽器によって、演奏可能な音域が異なります。ベースの音域がE1〜G3で、ピアノの音域がA0〜C8のようにです。
ただ、ピアノの音域が広いからと言って、1つの楽曲の中で全ての音が演奏されるわけではありません。楽曲によって、広い音域を演奏したり、一部の音域しか演奏されない場合もあります。
楽器によって、演奏される音域によって、音に含まれる周波数は異なります。
Mixcraftでは、Voxengo Spectrum Analyzerというプラグインを使えば、簡単にオーディオの周波数特性を表示することができます。
X軸(横)は周波数を表しており、周波数ごとの強さをY軸(縦)で表しています。
周波数特性を視覚的に捉えることができ、ミックスを行う上で役立つプラグインです。
では次に、ギターとバス・ドラムで簡単なミックスを行ってみます。バス・ドラムとギターの音源、周波数特性は以下の通りです。
バス・ドラム
ギター
それでは、このバス・ドラムとギターを同時に鳴らしてみます。周波数特性も、重ねてみました。
音源を注意深く聴いていただくと、バス・ドラムの音が若干もやついていることが分かるかと思います。
周波数特性を見ると、ギターの低域がバス・ドラムの低域とかぶっていることが一目瞭然ですね。
このような場合、イコライザーの出番です。イコライザーは、“ある周波数帯域の音量を上下する”というシンプルな機能を持っているため、対策方法は様々考えられますが、今回はギターの低域の音量を下げて、対処したいと思います。
何故、バス・ドラムの低域の音量を上げずに、ギターの低域の音量を下げるかというと、音のこもりを解消するには、不要な帯域を削る方が上手くいく場合が多いと言われています。
元々含まれていない周波数帯域をイコライザーで持ち上げると、耳障りな音やノイズなどが増えてしまうためです。また、周波数帯域をどんどん足していくと、結果的に音が割れてしまう危険性も含んでいます。
無いものを増やすより、あるものを削ってみましょう。
今回使用したイコライザーは、Parametric Equalizerです。
直感的に操作可能で、非常に使いやすいイコライザーです。
このParametric Equalizerを使って、ギターの周波数100Hz以下をばっさりとカットしました。さらに、ギターの音が若干こもっているため、高域を持ち上げています。
ギターにかけたParametric Equalizerの設定は、以下の通りです。
すると、音源はこのように変化しました。
ギターの低域がカットされ、イコライザーをかける前と比べると、バス・ドラムがさらにクリアに聴こえるようになりました。
上の図は、ギターにイコライザーをかけた後の周波数帯域とバス・ドラムの周波数帯域を比較しています。バス・ドラムの低域部分が、ギターとかぶっておらず、ギターの高域が持ち上げられていることが分かります。
このように、イコライザーで各楽器の周波数帯域を住み分けることが、音の濁りやこもりの解消の第一歩に繋がります。みなさんも実践してみてください。
今回は、 “イコライザーを使用する理由”に焦点を当てて、理論的な解説がメインでしたが、次回は様々なシチュエーションを想定し、実際にイコライザーを使用していきます。
それでは、次回もお楽しみに!
- 前回記事:ミキシングバランスについて
- 次回記事:EQの使い分けについて
投稿者:うえだ
カスタマーサポート担当。
丁寧かつ迅速なサポートを心がけています。
弊社取り扱い製品についてお困りの際はお気軽にご連絡ください。