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めざせ!Bitwig Studio デバイスマスター – vol.9

第9回:Spectral Suite活用法(その3)

今回は「Spectral Suite」の中から「Freq Split」をピックアップして解説していきましょう。

図0:メインスクリーン

Freq Splitの機能について

Freq Splitは、4チャンネルに音を分割して、フィルターバンクセット的な使い方ができるデバイスです。

図1

各チャンネルのボリュームバランスを調整して、特定の成分の強調を行なったり、任意のチャンネルの成分だけを使用するなどのシンプルな使い方もできますが、各チャンネルのChainに様々なプラグインをインサートできるというデバイスの特徴を活かすことによって積極的にこのデバイスを活用することができます。
例えば、各チャンネルセクションのChainにランダムなディレイタイムやパンを設定してスペクトラル・ディレイのように使用できたり、LFOによるモジュレーションを使用してチャンネルごとに異なる変調を行ない従来とは一味違うフェイザー効果を得ることができるなど、フレキシブルに活用できます。

デモサウンドについて

参考例としてFreq Splitのデモサウンドを作成してみました。

Freq Splitを活用したトラックメイク例

シーケンスフレーズのトラックにはスペクトラル・ディレイ効果、シンセパッド音色のトラックにはフェイザー効果をFreq Splitを使用して設定しています。ドラムとベースのトラックにはFreq Splitは不使用です。
それぞれの効果については以下のとおりです。

Freq Splitを使用したサウンドメイク例(スペクトラル・ディレイ効果を作る)

それではスペクトラル・ディレイやフェイズ効果を作成してみましょう。
まずは8分音符のシーケンスフレーズにスペクトラル・ディレイ効果を加えた例です。
図のように上から3チャンネル分のChainにそれぞれDELAY-1をインサートし、ディレイタイムやフィードバック量などを変えています。また、立体感を出すために上から2番目と3番目のチャンネルは左右にパンを振り分けました。

図2a:1番上のチャンネルのみをソロで演奏させた状態。右側にChainにインサートしたDELAY-1の設定を表示している。
図2b:上から2番目のチャンネルのみをソロで演奏させた状態。同様に右側にChainにインサートしたDELAY-1の設定を表示している。黄色の枠線で囲んだ部分がパン設定で、右に振り切って設定している。
図2c:上から3番目のチャンネルのみをソロで演奏させた状態。同様に右側にChainにインサートしたDELAY-1の設定を表示している。黄色の枠線で囲んだ部分がパン設定で、左に振り切って設定している。
図2d:上から4番目のチャンネルのみをソロで演奏させた状態。このチャンネルのChainにはプラグインを使用していない。

どのようなサウンドになったのかは、Freq Splitのオン・オフそれぞれの状態を聴き比べてみてください。

Freq Splitがオンの状態のシーケンストラック

Freq Splitがオフの状態のシーケンストラック

Freq Splitを使用したサウンドメイク例(フェイザー効果を作る)

続いてフェイザー効果を作成してみましょう。
ここでは各チャンネルのChainへのインサートは追加せず、デバイスのモジュレーターにLFOを追加し、上から1、2、4番目の各チャンネルのゲインを異なるLFO設定で周期的に変化させています。

図3a:1番上のチャンネルのみをソロで演奏させた状態。。黄色の枠線で囲んだ1番上のLFOを使用し、チャンネル1のゲイン部分を変調している。
図3b:上から2番目のチャンネルのみをソロで演奏させた状態。黄色の枠線で囲んだ2番目のLFOを使用し、チャンネル2のゲイン部分を変調している。
図3c:上から3番目のチャンネルのみをソロで演奏させた状態。黄色の枠線で囲んだ3番目のLFOを使用し、チャンネル3のゲイン部分を変調している。


各チャンネルをモジュレートするLFOは使用する波形やレートなどを変えているため、特定の成分だけがトレモロ的なビーティングをしていたり、長いスウィープ変化をしていたり、というようなユニークなフェイザーサウンドになるワケです。
こちらについてもFreq Splitのオン・オフそれぞれのサウンドを聴き比べてみてください。

Freq Splitがオンの状態のシンセパッドトラック

Freq Splitがオフの状態のシンセパッドトラック

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。