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めざせ!Bitwig Studio デバイスマスター – vol.8

第8回:Spectral Suite活用法(その2)

今回は「Spectral Suite」の中から「Transient Split」をピックアップして解説していきましょう。

図0:メインスクリーン

Transient Splitの機能について

Transient Splitは、サウンドのアタック音となるパーカッシブなトランジェント部分と楽器の音色となるトーン部分を分割し、サウンドメイクを行なえるSpectralデバイスです。 このデバイスのオーソドックスな使用法としては、アタックの弱いサウンドのアタック感を強調したり、逆にサウンドのアタックが目立ち過ぎる場合にはトーンを丸くしたりするなどが考えられます。

もちろん、前述のようなサウンド調整として使用するだけでなく、Transient部分やTone部分の積極的なサウンドメイクに活用することもアリでしょう。

サウンドメイクのポイント

Transient Splitの場合はGUI中の左側部分で分解の設定、右側で各要素において使用するプラグインエフェクトなどの設定ができます。

左側部分については、図1a中で数字で示した部分で以下のような調整が行なえます。

図1a
  • ①:プラグインによる素材解析の偏向バランスを設定し、Transient寄り、あるいはTone寄りに調整できます。
  • ②:TransientとToneのミックスバランスを設定します。
  • ③:ディスプレイの表示を波形表示、あるいは周波数のエネルギー分布を示すそのグラム表示のいずれかを選択できます。
  • ④:Transientのリリースタイムを調整し、Transient部分の減衰時間を調整します。
  • ⑤:Tone部分の減衰のスムージングを行ないます。

基本的にSpectral Suiteの各デバイスは、素材となるサウンドをそれぞれのデバイスに応じた要素で分離し、特定の要素に対してエフェクトや変調を加えるというプロセスでサウンドメイクを行なうのですが、サウンドのTransient、あるいはTone部分だけを使用する目的で使用するのも場合によっては良いでしょう。

図1b:黄色の枠線で囲んだ部分の上がTransient要素、下がTone要素に対してインサートを行なう部分となる。

デモサウンドについて

参考例としてBitwig Studioに付属するフレーズクリップを使用したTransient Splitのデモサウンドを作成してみました。

前半部分がTransient Splitオフ、17秒位からの後半部分がTransient Splitオンの状態となっています。特にパラメータは変更せず、Transient部分にはサチュレーターとフィルター、

図2:Transient部分に使用したプラグインエフェクトの状態はこのようになっている。

Tone部分には2種類のディレイをインサートしています。

図3:Tone部分に使用したプラグインエフェクトの状態はこのようになっている。

リバーブはインサートではなく、トラック内のデバイスの最終段で使用しました。Transient Splitがオンの状態となる後半部分の方が、サウンド全体の輪郭が明瞭になり、アタック感もオフの時より増したサウンドになっているのがわかると思います。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。