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めざせ!Bitwig Studio デバイスマスター – vol.11

第11回:Spectral Suite Device活用法(その5)

今回で“Spectral Suite Device”の紹介は一区切りとなります。最後に“Harmonic Split”をピックアップして解説していきましょう。

図0:メインスクリーン

Harmonic Splitの機能について

Harmonic Splitは、偶数次倍音と奇数次倍音という2グループの高調波と1つの非高調波に振り分け、それぞれの要素に対して別々にサウンドメイクが行なえます。

この高調波を2グループに分ける際、設定値が2の場合だと、2次倍音ごとにA、Bそれぞれのチャンネルに振り分けられ、チャンネルAには1、3、5次倍音・・・、チャンネルBには2、4、6次倍音・・・のように振り分けられます。

図1:設定値を2にした場合の設定状態。なお、実際の操作において設定値は入力箇所をトリプルクリックして入力する。

また、特殊な設定として設定値=1にするとチャンネルAには基音のみ(=Fundamental)、チャンネルBにはそれ以外の倍音が振り分けられるようになります。

図2:設定値を1にした場合の設定状態。設定値を1にすると本文のとおりチャンネルAには基音のみ(=Fundamental)、チャンネルBにはそれ以外の倍音が振り分けられる。

デモサウンドについて

参考例としてHarmonic Splitのデモサウンドを作成してみました。

Harmonic Splitを活用したトラックメイク例

Harmonic Splitを使用する前の元の状態と使用したサウンドの違いは以下のトラックを聴き比べてみてください。

Harmonic Splitを使用する前(=元のサウンド)の状態

Harmonic Splitを使用したサウンドの状態

デモサウンドでは、Bitwig Studio内蔵のエレピ系のコード演奏のフレーズクリップとTR-808形のリズムループを必要に応じてフレーズをエディットして使用し、全体を構成しました。

Harmonic Splitは、リズムループのフレーズ(使用フレーズは、“808 (Bass-08) – Analog Tribal”)のトラックで使用しています。

設定のポイントとしては、キックの音圧感をブーストするためにチャンネルA、Bの振り分けでチャンネルAを基音のみとなる設定を使用しました。

このように設定することで、ほとんどキックと一部のタムの音の成分のみにできることで、他の打楽器のバランスや音色に影響を与えずにキックのサウンドをブーストすることができるワケです。ここにTransient Controlをインサートしてサウンドを整えました。

図3:チャンネルAの設定状態。黄色の枠線で囲んだ部分にインサートされたエフェクトデバイス(=Transient Control)は右側に表示されている。

そして、非高調波成分のチャンネルにはRing-Modをインサートし、少しサウンドに色を付けてみました。

図4:非高調波成分のチャンネルの設定状態。黄色の枠線で囲んだ部分にインサートされたエフェクトデバイス(=Ring-Mod)は右側に表示されている。

また、各チャンネルのボリュームバランスやパンの設定は図のようになっています。

図5:黄色の枠線で囲んだ部分が各チャンネルのボリュームとパンの設定状態となる。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。