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めざせ!Bitwig Studio デバイスマスター – vol.10

第10回:Spectral Suite Device活用法(その4)

今回は「Spectral Suite」の中から「Loud Split」をピックアップして解説していきましょう。

図0:メインスクリーン

Loud Splitの機能について

Loud Splitは、サウンドの音量の大きさによって要素を分離するSpectralデバイスです。音量の小さい部分を大きくしたり、大きい部分をミュートしたりすることによって、サウンド自体の質感を変えることが可能です。

また、特定の音量の要素のみを使用して大胆にエフェクト処理したサウンドを得ることもできます。

図1

デモサウンドについて

参考例としてLoud Splitのデモサウンドを作成してみました。

Loud Splitを活用したトラックメイク例

全体としてはBitwig Studio内蔵のフレーズクリップを使用していますが、必要に応じてフレーズをエディットしたり、部分的に使用しつつ、全体を構成しています。

この中でLoud Splitを使用したのは、タップダンスによるパーカッシブなリズムループの「Tap Dance School 01」というクリップを使用したトラックです。元々の素材はタップのアタック感が強いサウンドになっていますが、ここではそのアタック感をカットして残響ノイズ部分を活かしたサウンドメイクを行ないました。

設定としては、サウンドで一番目立つ部分となるLoudチャンネルをミュートして、MidチャンネルはDelay+を使用し、QuietチャンネルはTransient ControlとReverbを使用したエフェクト処理を施しています。

図2a:MidチャンネルのChainの設定状態。Delay+による空間処理を施している。
図2b:QuietチャンネルのChainの設定状態。こちらはTransient Controlで波形をエディットし、Reverbによる空間処理を加えた。

このトラックのLoud Splitを使用する前の元の状態と使用したサウンドの違いは以下のトラックを聴き比べてみてください。

Loud Splitを使用する前(=元のサウンド)の状態

Loud Splitを使用したサウンドの状態

Loud Splitはダイナミクス系のエフェクト的なデバイスですので、劇的にサウンドを変化させるような使い方は難しいですが、特定の要素の音量が目立つ場合などの調整に使用してみたり、デモサウンドのように特定の音量要素を加工するなどのような使い方をしてみると良いでしょう。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。