You are currently viewing 【ソフトシンセ入門】サウンドメイクの基本をSPIREでマスター(vol.3)

【ソフトシンセ入門】サウンドメイクの基本をSPIREでマスター(vol.3)

第3回:オシレーターセクションをチェック

今回は、Spireのオシレーターセクションをチェックしていきましょう。サウンドメイクの核となる部分ですが、設定のポイントに主眼をおいて解説したいと思います。

オシレーターセクションの概要

Spireのオシレーターセクションは4基のオシレーターを有しています。1基のオシレーターはサウンドメイクの元となる波形やピッチなどの設定を行なう“WAVE”部分、サウンドの厚みや広がりを作り出すためのユニゾン効果を設定する“UNISON”部分、定位の設定や各フィルターへの出力バランスを調整する“MIX”部分という3つの部分で構成されています。サウンドメイクの仕上げにおいては重要な4基の各オシレーターのボリュームバランスを調整するMixerセクション部分も本連載ではオシレーターセクションに含めて扱います。

図1:オシレーターセクションを構成する各部分。それぞれ①がWAVE、②がUNISON、③がMIX部分となっている。

音色作りにおける波形の選び方

さて、音色作りにおいてはオシレーターで設定する波形によって出来上がる音色がほとんど決まるということは既に知っている人も多いと思います。サンプリング波形を持ったデジタルシンセなどでも波形選びは重要ですが、殊にアナログシンセサイザーの場合には三角波、ノコギリ波、矩形波などの波形しか内蔵されていなかったため、特に波形選びは重要でした。

少々Spire自体の話からはそれますが、例えば弦楽器のバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスといった楽器の音色を作成したい場合、各学期のサンプリング波形を持ったデジタルシンセであれば、内蔵波形の中から該当する波形を選択すれば概ねその楽器の音色らしくなりますが、アナログシンセの場合にはバイオリンやチェロなどの波形は内蔵されていません。

そこでどうするかというと前述の弦楽器の各楽器は楽器の大きさは違いますが、楽器の出す音色の倍音構成は似たものになっています。そのことから、それらの楽器の倍音構成に近い波形を選び、音色を作っていきます。そして、オシレーター波形のオクターブ設定を行なって作りたい音色の音域に合わせていくワケです。

シンプルなアナログシンセ波形を得るには?

ではSpireに話を戻しましょう。

Spireのオシレーターは、アナログシンセ同様のオーソドックスな倍音減算シンセシスだけでなく、FM変調やオシレーターシンク、フォルマントを変調するVowelモードなどマルチシンセシス型のオシレーターが採用されていますので、作りたいサウンドに合わせてモードを切り替えられるのが特徴となっています。ある程度色々なシンセを使ってきた人であれば、各モードのパラメーターの設定なども理解できるかと思いますが、シンセの音作りが初めてという人、これから始めたい人などはオーソドックスな倍音減算シンセシスのモード“Classic”モードのマスターを最初の目標として始めると良いでしょう。そこでまずはシンプルなアナログシンセ波形を得る方法から紹介したいと思います。

ClassicモードのWAVE部分の初期状態は次のようになっています。

図2:ClassicモードのWAVE部分の初期状態。

初期状態で設定されている波形はノコギリ波となっていますが、“ctrlA”のノブを右に動かしていき、右いっぱいに回し切った状態で矩形波が得られるようになります。

図3:“ctrlA”のノブを右いっぱいに回し切った状態。

また、矩形波に設定した場合、“ctrlB”ノブを動かすと波形振幅のデューティー比を変えることができ、いわゆるパルス波のバリエーションを得ることができます。

図4:“ctrlB”ノブを動かしてパルス波のバリエーションを作成した状態。

ちなみにサイン波と三角波はウェーブテーブル波形で用意されています。使用したい波形を選択したら“wt mix”を右に回し切ることでそれぞれの波形のサウンドを得ることができます。

図5:ウェーブテーブル波形でサイン波を選択している状態。

なお、パルス波変調波形(PWM波形)はLFOやEGなどの変調セクションを使用することで得ることができます。

 

図6:PWM波形を得るための設定例。ポイントはLFOセクションで変調先にオシレーターのctrlBを指定し、後は黄色の枠線で囲んだ部分を調整する。もちろん、他のパラメーターも調整することで更に複雑な変調設定が行なえる。

詳しくはLFOやEGセクションの回までしばしお待ちを。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。