Rob Papen BLUEはFM、フェーズ・ディストーション、ウェーブ・シェーピング、加算/減算など多様なシンセシス方式と、6つのオシレーターを持つ強力なソフトウェア・シンセサイザーです……と書くと、他のバーチャル・シンセサイザーと比べて少しハードルが高いように聞こえるかもしれませんが、プリセットを選んでEasyモードで簡単に使うこともできます。様々なシンセシス方式を持っているため、シンセの勉強にもなりますよ!
■ 基本画面と信号の流れ
BLUEの画面は大きく3つのセクションに分かれています。上部が6つのオシレーターが並ぶオシレーター・セクション。下部がマルチ・ディスプレイ・セクション。上下の間にフィルター・セクションがあります。
6つのオシレーターのうち、AとBの2つにはパルス・ワイズ・モジュレーションとシンメトリーが搭載され、それ以外の機能はすべて同じです。それぞれのオシレーターの信号の流れはAlg(アルゴリズム)で選択します。
画像ではOSC AからB、CからF、DとEはそれぞれ直接Outに接続されています。多種多様なルーティングがプリセットされているので、使用方法に合わせて選択します。オシレーターにFMやリングモジュレーションを適用するには、FMやリングモジュレーションを使用するオシレーターに信号を受けわたす必要があります。画像でいうところのオシレーターBやFでFMなどの効果を使用します。
■ Env(エンベロープ)
BLUEにはAからFまでのオシレーターと2つのフィルター、それからボリュームのそれぞれにエンベロープがあります。たとえば立ち上がりの速いサウンドと、立ち上がりの遅いサウンドを組み合わせて、こんなサウンドも簡単に作れます。
エンベロープのデモサウンド
6つのオシレーターとそれぞれのエンベロープを組み合わせて使用しているだけでも十分な可能性を感じられます。
■ Multi-Env(マルチ・エンベロープ)
また、BLUEにはマルチ・エンベロープという機能があります。
マルチ・エンベロープは最高16ヶ所のポイントを追加して、自由にエンベロープを描画でき、Free AからFree Dまでの4種類が使用可能で、Modsメニューでどの機能に適用するかを決定します。
文章では判り辛いので音を聞いてみます。
上の画像の状態では、左上から右下に一直線が引かれています。この状態でスタートポイントからエンドポイントまでの長さを1小節に、適用先はFilterのFreqに設定しています。
マルチ・エンベロープのデモサウンド
この設定では1小節ごとにフィルターが規則的に全開から全閉に向い、また次の小節では全開から全閉を繰り返しています。マルチ・エンベロープのポイントはダブルクリックで追加、2つのポイント間の線上を上下にドラッグすると曲線率を変更できるので、このように設定してみました。
マルチ・エンベロープのデモサウンド2
フィルターのFreqを使用してリズムを持たせてみました。もちろんマルチ・エンベロープは6つのオシレーターの各ノブやフィルターの各ノブ、ピッチやパンなど様々な項目に適用できます。
例えば先にフィルターのFreqに適用したエンベロープでピッチを変更するように設定してみるとこのようになります。
マルチ・エンベロープのデモサウンド3
BLUEには優れた機能が多数搭載されています。使用すればするほどエンベロープがカギになるのではないかと思うくらい、アイディア次第でどこまでもオリジナリティを追求していけます。
■ Mods(モジュレーション)
先にマルチ・エンベロープはModsメニューと組み合わせて使用すると書きました。
Modsページを開くと各10スロットのページが2つ、計20のスロットが用意されています。ここではマルチ・エンベロープだけでなく、通常のエンベロープやLFO、ベロシティやアフタータッチなどのMIDI CCで、「何」を「どのくらい」操作するかを設定します。そのためのスロットが20もあるのですが……はたして20の機能をひとつのサウンドに適用したとするなら、どんなサウンドが出来上がるのでしょうか。
他のRob Papen製ソフト・シンセにも言えることですが、サウンドを思い通りに操る初めのポイントは、以下の3点だと思います。
- Source(何で)
- Destination(何を)
- Amount(どのくらい)
マルチ・エンベロープの項目で試してみたピッチのサウンドで例えると、「マルチ・エンベロープのFree A(Source)で、OSC AのSemi(Destination)を、+48semi(Amount)動かすように設定した」ということになります。
BLUEは他のRob Papenソフトウェアと比べて少し難しいイメージがあるかもしれませんが、もちろん他のRob Papenソフトウェアがそうであるように、Easyモードが用意されていますし、プリセットも豊富に用意されています。
BLUEはあまりにも豊富なシンセシス方式を搭載しているだけに、プリセットの幅も他のソフトウェア・シンセサイザーと比べて格段に広いです。2,000を超えるプリセットを切り替えながら試聴していくと、アルペジエイターが適用されているものやステップシーケンスでグルーブが組まれているもの、突飛なサウンドから即戦力のサウンドなどなど、バラエティに富んだサウンドが次々に飛び出してきます。
ありきたりのサウンドでは物足りない。
オリジナリティ溢れるサウンドが欲しい。
そんな方にお勧めしたいシンセサイザー、BLUEをぜひお試しください!