今や広いジャンルの音楽に使用され一般的な楽器となったシンセサイザー。ハードウェア/ソフトウェアを問わず多種多様な製品が溢れています。あまりの選択肢の広さに、何を使用したらよいのか迷ってしまいますよね。できることの幅が広ければ操作が難しくなり、簡単になれば逆にできることが制限されます。その意味では、今回ご紹介するRob Papen PREDATORは、操作性と可能性のバランスが非常に優れたシンセサイザーだと思います。
■ PREDATORの印象
パッと見た印象は無骨というか機械的というか、ポップな見た目のソフトウェア・シンセサイザーが増えてきている近頃では、逆に新鮮に感じるほどノブだらけです。
しかし、良く見てみると、3つのオシレーターはほぼ同じノブだったり、フィルターやアンプ部分もオーソドックスな作りなので、シンセサイザーの音作りをほんの少しでも知っていれば、何の苦もなくすぐにサウンド作りが開始できると思います。
PREDATORではアンプ部分以外にもエンベロープが用意されていますが、通常のADSRに加えてRobPapenの特徴のひとつであるfadeが装備されています。fadeの機能については第2のアタックというような機能で、アイディア次第でいろいろとおもしろい使い方ができると思います。SubBoomBassの紹介記事中で詳しく触れていますのでご参照ください。
先に「シンセサイザーの音作りをほんの少しでも知っていれば」と書きましたが、PREDATORは「ADSR?? ナニソレ!?」という方も安心して使っていただけるように、即戦力なサウンドプリセットが大量に搭載されています。
多数のBankとプリセットが搭載されていますが、それぞれのBankの中で「Dance」「classic synth」「Trance & PsyTrance」など、音色をイメージしやすい分け方になっているので、大量のプリセットの中からでもイメージした音色に近いモノを探しやすいようにできています。
■ VARIATION
PREDATORのプリセットにはアルペジエイターが組まれているものも大量に用意されているので、プリセットを次々とロードしていくだけでもかなり楽しめると思いますが、気に入った音色があったらVARIATIONを作ってみるのもオススメです。
PREDATORの画面右下を見ると、VARIATIONという項目があります。これは現在選択しているプリセットの情報を元に、バリエーションを作成します。AからDまでのボタンをクリックすることでサウンドが変化しますが、amountというノブの数値が小さいほど変化が少なく、数値が大きくなるほど大きく変化します。AからCはサウンドそのものを変更し、Dのみエフェクトの設定を変更します。
試しに異なるアマウント量でいくつかバウンスしてみました。
原音
amount小
amount中
amount大
何事もほどほどが良いですね……edit/origボタンで作成したバリエーションとオリジナルのサウンドを聴き比べることができるので、amountを調整しながらいろいろためしてみるとグッとくるサウンドに出会えると思いますよ!
■ MORPHING
もうひとつ、PREDATORにはサウンドを操る特徴的な機能があります。それがVARIATIONのすぐ下にあるMORPHINGです。
異なる2つのプリセットを選択して、Mophingノブで適用量を決めてgenボタンをクリックする。すると、異なるプリセット間でサウンドのブレンドが作成されます。
例えばHARDCORE DIVEという音色をAに。
HARDCORE DIVE
JUMP DISTORTという音色をBにロードします。
JUMP DISTORT
それぞれを半分、50%の適用量でブレンドしてみました。
50%の適用量でブレンド
それぞれの特徴の良いトコ取りなサウンドができました! 適用量のノブの設定を変更しながらgenボタンをクリックし、気に入ったサウンドができたら保存しておくと良いですね。MORPHINGを試すときには現在のBANKの最後にあるMorphing spotというプリセットを選択しておく必要があります。
■ ChodeMode / Strum
特徴的といえば、PlayModeの中のアルペジエイターもPREDATORの特徴的な機能のひとつですが、ここではあえてPlayModeと合わせたもうひとつの特徴的な機能をご紹介します。
PlayModeはモノ/ポリフォニックやアルペジエイター、ユニゾンなどが選択できます。ユニゾンのデチューンやポルタメントタイムを設定するノブの他に、もうひとつchordという項目があります。この項目を使用してコードモードを使用することができます。
chordをクリックすると、off / Learn / Playというメニューが選択できます。通常はoffになっているので、まずLearnを選択します。
インジケーターがLearnとなっているときに、例えばC-E-G-B-Dと順番にキーボードから入力(コードを演奏するように一度に押さえなくても1音ずつで構いません)した後、chordをPlayに変更します。すると、指一本でコードが演奏できるようになります。
コード演奏
さらにPlayMode部分のAdvancedパネルを表示すると、strumというノブがあります。
Strumというのは弦楽器を爪弾く、ポロポロと鳴らすというような意味です。つまりこうなります。
Strum
PREDETORは空気を引き裂くようなLEADやフロアを揺るがすほど力強いBASS、どこまでも広がりを感じるPADサウンドなど、得意な音色の幅が広くどれも素晴らしいサウンドが揃っています。DAWソフトに付属のシンセサイザーに物足りなさを感じている方や手持ちのネタをパパッと増やしたい、でもつまらないサウンドは欲しくないという方には特にオススメです!