続き:なぜ厳しくなったの? 音楽業界

なぜ厳しくなったの? 音楽業界

本来の再販制度の意義は「書物や楽曲などは文化遺産であり、その価値を保護する必要がある」という名目で価格維持の慣習が形成されてきました。一部政治的な判断による強制的な規制緩和も検討されましたが、未だに再販制度は維持されている現状です。この最大の理由として、権利の切り売りに成功した川上に位置するライセンスホルダーが潤う産業構造になっていることが言えます。この既得権を守るために、頑張る人たちがとても多いということなのです。

川上に位置する人たちの代表が著作権を保有する人たちなのですが、例えば自由競争の象徴であるアメリカでも既得権益者による著作権制度の悪しき改変が実際に起こっております。皆さんもよくご存知のウォルト・ディズニー社がその最たる例です。再販制度とは一線を画しますが、彼らは、著作権の有効期限を政治的圧力によって、作者死後50年でフリーになるはずの著作を70年に延長させる法案を可決させた経緯があります。1998年のことです。

話をもとに戻しますが、既得権益といっても、一番の弱者は誰なのかというと、流通の機能を担うCD小売店に代表される小売業です。小売店は、CDという物の流通を行うことで収益を上げなければならないのに対して、ライセンスホルダーは、楽曲の消費があった時点で、相応の報酬を受け取れるのです。著作権法の保護のもと、楽曲が使用されるたびに、使用料をとれるのです。

JASRAC収益

具体的に言いますと、オンラインしかり、コンサートしかり、スーパーで流されているBGMも厳密にいうと使用料を払っており、著作者には相応の報酬が支払われます。現に著作権の管理を行っているJASRACの収益は、CD販売が右肩下がりなのに対してほぼ横這いを維持していることからも、川上産業は新たな産業構造を構築できたといえるのです(図を参照ください)。

昔は業界全体で助け合う意味で再販維持を制度化してきたことが、皮肉にもCD小売店の首を絞めることになったことは、時代の劇的な変化を感じずにはいられませんね。


投稿者:Sales K

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