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FabFilter Tips vol.62

ボーカルチェーンのつづきを…

いやぁ日本列島全体的に暑い!ホント暑いですね。

冬はうれしかった真空管のウォームなサウンドだけでなく温度的な暖かさが最近は憎らしく感じます。

エアコンを買い替えようかと量販店に行ったらモノはないし、工事の日程は2週先…。現在でも効いていないわけではないので、我慢することにしようかな…。

ボーカルトラックに触れていきましょう

まず最初に、イコライザーで不要?というかあったら困るような帯域を整理します。

前にも話しましたが、余計な部分を取り除かないとこの後にかけるコンプレッサーの動作が狙ったところと違う反応をしてしまうので、共鳴したり必要以上になっている成分があったら抑えるようにしましょう。

EQ(1)→ COMPという並びになりますね。

その次に(必要であれば)もう一度EQを使用してコンプレッサーのかかった音を理想に使づけるために調整をします。

※ なぜ、EQを2つ使うのか?

2つとは言わず、いくつか重ねて使うエンジニアさんもいますが、今回は2つ使った場合で、私のしかも1つのケースを紹介しましょう。

この件も前に紹介しましたが、1つのEQは補正するためのEQで、2つめのEQで音作りをするように使っています。

原さんの声を気持ち明るめにしたいので、私がミックスを担当したとするとハイを少しだけ上げ目にするかもしれませんね。

その後はサ行の発音が気になるのであればディエッサーで抑える必要もありますし、波形を切って編集するまでもないけど服がこすれている音や何かしらの不必要な音が入っている場合、そして歯切れよくしたい場合にはゲートを使うことも必要でしょう。

これを全部入りでセッティングした場合、

EQ(1)→ COMP → EQ(2)→ Dess → Gate となります。

といってもここまではインサートスロットでの話で、上記5プラグインは直列に並んでいます。

それに加えセンド/リターンでディレイ、リバーブをかけると7つのエフェクトを通すことになりますね。

みなさんが普段ミックスをするときと比べて多いですかね?

前回も話したように、録音する段階で「こういう音にしたい」という明確な目標があって、尚且つそれを達成した音が録れていればEQのどちらかを使わなくてもいいシーンがあるでしょうし、ゲートも必要としないケースもありうるでしょう。

私的にはいじらなくてもいい部分に手を加えて音を濁らせたり、良くしようと思った処理が良くない結果を生むこともあるので、プラグインを使うことや、「これを使うといいよ!」とお勧めされているものでも盲目的に使うのではなく、楽曲とボーカルの声質や歌い方に合っていると思える(信じられる)ものを選ぶといいでしょう。

進化系を聴き比べてみる

まず、ノーエフェクトの音を聞いてみましょう。

EQ(1)は補正をするために使用すると書きましたが、きちんと録られているのでいくつか試してみて、そのままの方が良いと思い、手を加えない方がいいという判断をしました。コンプレッサーは元のニュアンスを壊さないようなセッティングにしています。

EQ(2)は、シェルビングタイプでハイを上げると上がった分をその後に繋がるディエッサーに抑えられるという本末転倒な結果になるので、ベルタイプを使用して2k付近を少し持ち上げています(これによって子音がより綺麗に聴こえてきた気がしてます)。

ディエッサーはデフォルトセッティングでも十分な気がしましたが、気になった部分だけに反応するようにスレッショルドを調整しました。そしてゲートは使うことで子音のニュアンスが鈍くなったのでいくつか設定を試したのちにバイパスにしました。

こうやってみると5つあったボーカルチェーンの候補のうち2つは使っていませんね。

こういったナチュラルな雰囲気を残したい音の場合は、プラグインを使わなければ!という意識ではなく、「必要であれば使う」程度の意識でいた方がいい結果を得られそうです。

最終的にこんな感じになりました。

最初に使おうと思っていたプラグインはすべて使いませんでしたね。こういう臨機応変さも必要だと思います。使い過ぎて何を表現したいのかわからない音になってしまうこともあるので「音」をよく聴きながら進めましょう!

まとめ&次回以降のお知らせ

今回まで原かの子さんの歌を使用させていただきましたが、次回からは新しい楽曲でお伝えしていこうと思います。

しかもバンド形式!

ドラムやベースもあるので、回数多めになると思いますが、FabFilterのプラグインを総動員していい感じに仕上げていくところをお見せしたいと思います。 お楽しみに!

福地 智也

Jimmy Nolen、Nile Rodgers等に影響を受け、 Blues, Soul, Funkをこよなく愛す。ギタープレーヤーとして杏里、倖田來未、片瀬那奈、さんみゅ~、楠田亜衣奈等のレコーディング、佐藤康恵のライブに参加、同サポートバンドでは、バンドマスターを務める。ギター 演奏、音楽制作のみならず、楽器、DAWのセミナー、デモンストレーションでは、難しい用語を使わずに、誰にでもわかりやすい内容が評価を受けてい る。 https://www.dopewire.net/