NAMM SHOWの季節がやってまいりましたね。ディリゲントさんのスタッフも現地に向かわれているようです。
直前のタイミングでディリゲントさん取扱いのBitwig Studioも新しいバージョンがリリースされましたね。
今週末はSNSでニュースをチェックしましょう!
コンプレッサーを使う目的
前回、ボーカルトラックをなんとなく整えたところまで行きました。今回はそこにコンプレッサーでいくつかの効果を足していきます。
前回の後半にも書きましたが、コンプレッサーを使う目的として
- ただ単に突出したレベルを抑えてトラック内のレベル差を無くしたい
- コンプレッションを加えることでパワー感を増したい
- 音を前面に張り付かせたい
- コンプレッサーが持つ音のカラーを加えたい
を挙げました。
1.のレベル差を無くす(小さく)したいと思うようなトラックは、同一のセクション内で音量差が激しくてオケに埋もれてしまう部分がでてきてしまうときでしょうね。
小さい音に合わせてミックスすると声を張っている部分は過剰に目立ってしまう、最悪の場合は歪んでしまうかもしれません。
大きい方に合わせると弱めの声はオケの中に埋もれてしまうことになるでしょう。
ということで、今回はちょっと無理やりにでもレベルをなるべく一定に、そしてちょっとニュアンスを加えられるようにしようと思います。そして、成功例と失敗例?の両方を聴いていただこうと思っています。
コンプレッサーのパラメーター名とその役割をおさらい
Pro-Q3の使い方を紹介した回でもお話していますが、コンプレッサーを触るときに重要なパラメーターがあります。もう一度おさらいしましょう。
スレッショルド
コンプレッサーが動作をはじめる音の大きさを設定。
※ 実際にはニー(KNEE)もこの値に影響していて、スレッショルドをxxdBにした場合、ハードニーに設定すればxxdBを超えた時に初めてコンプレッサーが作動し始めるがソフトニーに設定した場合、設定したxxdBよりも低い値から徐々にコンプレッサーが効き始めるようになり、コンプレッサーがスイッチのオン/オフのような感じで切り替わるのではなく徐々に動作が濃くなっていくのでより自然なコンプレッションが得られます。
レシオ
スレッショルドを超えた信号をどれくらいの比率(レシオ)で圧縮(コンプレッション)するか。
※ 当たり前の話ですが、スレッショルドを超えた分を抑えるということで、わかりやすい数字で説明するとスレッショルドを10として入力信号が20だった場合、
レシオ2:1の場合は15に圧縮され、レシオ5:1の場合はより強く圧縮され12になります。
アタック
スレッショルドを超えた信号にコンプレッサーが効き始めるまでの時間を決定。
リリース
スレッショルドを下回った後にどれくらい長くコンプレッションを持続させるかを設定。
コンプレッサーのかけ方で印象が変わる?
コンプレッサーの音って、激しくかけないとわかりにくかったりするのでついついやり過ぎてしまうこともあるのですが、ガチガチにかけたい場合はともかく、今回使用しているようなアコースティックな響きだし、柔らかな声の場合はソフトニーで緩めにかけて穏やかに済ませたいと思います。
まずは前回までのトラックを聞いてみましょう。
穏やかなイメージのコンプレッション
このボーカルトラックではあんまりガチっとかけたくないイメージなので、ちょっとレベルが飛び出たところが抑えられたらいいかなっていう感じにしました。
FabFilter製品のほとんどが波形を確認しつつ調整できるのでなんとなくのイメージをビジュアルで設定して、最終的には耳で判断することができますね。
今回は目安として-12dBを超えないような設定にしてみました。内側の波形がコンプレッション後です。
本当はアタックを遅くしておきたかったのですが、そうすると瞬間的なピークではコンプレッションが追い付かないのでビジュアルで確認しつつ目的の音にコンプレッションがかかるように設定しましょう。
激しめなイメージのコンプレッション
これは実際の制作でOKにすることはないけど、比較対象としてキツめにかけたものを用意しました。
声が近く聴こえるようになりましたし、アタック感が増し、エネルギーがぐっと固められたような感じがしますね。
※ 圧縮(コンプレッション)してますからね(笑)。
穏やかなコンプレッションにした場合、レシオを低めに設定すると十分なリダクションが得られない場合があります。
この場合どうしましょう?
解決案
この場合、各パラメーターの組み合わせで対処していくことになります。
前述したパラメーターの役割を確認しつつ状況に合わせて工夫するんですが、スレッショルド値を下げるともっと小さい音にもコンプの効きが良くなります。
今回の場合は優先順位が一番ではないですね。
次にレシオ、より強くコンプレッションをするようになるので、このパラメーターを使いますが、値を上げ過ぎるとニュアンスを失う可能性があるので要注意。
アタックはより速くコンプが反応してくれるようになるので、このパラメーターもあり。リリースは短いパッセージが続いている場合は速めでいいと思います。ということは、レシオを上げつつアタックで反応がどの程度か確認し、それでもイメージが合わないならスレッショルドを下げてみる…というのがわかりやすいかなと思いました。
適正な値はどういうボーカルが収録されているかにもよって異なるのでそれぞれ、どんな音色にしたいかイメージをもって作業を進めるといいと思います。