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ESI Xjamレビュー:山木隆一郎

プロデューサー/アレンジャーの山木隆一郎氏に、Xkeyの兄弟機として2022年末に登場したUSB MIDIパッドコントローラーESI「Xjam」のインプレッションを伺いました。

山木隆一郎 / Ryuichiro YAMAKI
StudioW4M-Ryuichiro Yamaki’s Official & Private website

安室奈美恵、鈴木愛理、東方神起など数多くのプロデュース、作曲、アレンジ、Remixを手掛ける日本R&B界の鬼才。主に、R&B、Hip Hop、FUNK、Electroなどを中核にしたClub/Dance系を得意とし、近年はジャンルを超えた作品も多数制作。日本人離れした鋭角なサウンドやグルーヴ、職人気質なプロデュースワークは、国内外のメジャーシーン、インディーズシーン問わず高く評価されている。スパム春日井とのユニット「RYPPHYPE」としても活動中。

Xjam

ドイツのメーカーESIより、MIDIパッドコントローラーのXjamが登場。ESIの製品は、曲線デザインを使うのがうまいメーカーだと思っていたのだが、今回のXjamも期待を裏切らないスタイリッシュな製品だ。

外観について

まず、届いた瞬間、パッケージがあまりにも薄いことに驚き、開けて本体を確認すると、かなり小さいことにさらに驚いた。

Xjamの大きさは、iPad miniと同等の200mm x 135mm(iPad miniは、195.4mm x 134.8mm)。高さは、iPad miniよりだいぶあるが、それでも、23mmしかない。その23mmというのも、ノブの高さを含むとその高さというだけで、本体自体の薄さは約15mm程度しかなく、見た目はかなり薄いコントローラーだ。表面はアルミ製のインターフェースで、手前側がいい感じに美しく曲線に巻いており、PADに手をそえた時に痛くない。重量は371gある。iPad miniが297gなのを思えば、Xjamが軽いのがわかってもらえると思うが、設置してみると適度に重みもあり、しっかりしていて、PADを叩いていてズレることもない。

これだけ薄く軽いとモバイル性が高く、サクっとバッグの中へ入れ、どこにでも持ち運んでいけそうだ。姉妹機であるXkeyと並べてノマドミュージシャンもアリかもしれない。ツアーに行くミュージシャンにもおすすめ出来る。今のところXjam専用ケースは無いようなので、是非作っていただきたい。

電源はUSB-Cバスパワーで、付属のUSBケーブルもジャマにはならない細さなのも嬉しい。本体は、1/4インチネジで、三脚やスタンドに止めることが可能なので、ライブ時には、カメラの三脚で固定するのもアリだ。

PADについて

PADを見ていこう。約24mmの正方形で、4 x 4の合計16個のPADが並ぶ。イルミネーションは、PAD全体ではなく、周囲が光るタイプ。各機能や、ベロシティに応じて、PADの周囲のLEDの色が、緑・黄・赤と3段階に変わるのが非常にわかりやすい。PAD自体は、硬すぎず柔らかすぎずで、ちゃんと押した感もあり、試しにドラムを叩いてみると、跳ねっ返りが気持ちよく、長時間叩いていても、疲れづらくちょうど良いように感じた。

また、ポリフォニック・アフタータッチや、チャンネルプレッシャーにも対応しているので、シンセに繋ぎ、PADを押し込んで見ると感度も良く、Filterを開けるなどの演奏がかなりしやすかった(ポリアフタータッチ対応の他社製品よりも、チャンネルプレッシャーがしやすかったように思う)。

ノブやボタンついて

PADとペダルには、Note#の他に、MIDI CC#、Program Change、MMCを割り当てられる。また、6つのエンドレスエンコーダーノブには、MIDI CC#の他に、Program Changeや、Pitch Bend、After Touchが割り当てられるのだが、Pitch BendとAfter Touchが割り当てられるのは、新しいと思った。ピッチベンドやアフタータッチをノブで操作するのは面白い効果が出そうだ。

ノブを回すと適度に重みがあるのも好印象だ。軽いとどうしても数値が早く動きがちだが、重みがあればゆっくり動かせる。

BANKボタンやSETUPボタンなど、セッティング系のボタンが6個あるのだが、こちらは押した時にクリック感があることと、PADと同様に3色に光るので、今、自分が何をしているのかがわかりやすい。

本体設定について

ほとんどの設定が本体のみで行えるのもグッド。PADがテンキーのような役目をするのが面白かった。ただ、例えばSetupボタンを押したあとに、PAD7を押して、各設定のPADを押してから、PAD16で決定という流れをしないといけないので、ちょっと操作を忘れそうになるのがデメリットだ。覚えてしまえば問題はないと思うが、そんな時は、Mac/PCアプリXjam Editor経由で設定するのがいいと思う。シーンプリセットを48も登録出来るので、あらかじめアプリで作ってしまっておけば、制作時に悩むことは減ると思うが、押せばベロシティが127になるボタンはあってもよかったように思う(海外製のコントローラーのEditorってわかりづらいのが多いのだが、Xjam Editorはわかりやすかった)

Xjam Editorでは、PADのベロシティカーブが自分で好きなように描けるのだが、これは他にあっただろうか?持っているPADコントローラーは、決められたカーブを選ぶことが出来ても、自分で書くことは出来なかったように思うので、独自の機能ではないだろうか?

その他の機能について

PADのリピート機能も付いている。テンポを本体で決めるのはもちろん、DAW側からClockを送って追従することも出来るのはありがたい。欲を言えば、リピート中にベロシティを変更したり、Divisionを変更したり出来るようになって欲しい。

ハードシンセ持ちとしては、Program Changeが、PADとノブに割り当てることが出来るのがいい。さらに、各PADには、BANKチャンジ込みのProgram Changeを割り当てておけたり、1つ進むや戻るも出来るので、ライブでのProgram Changeにも最適。近年のPADコントローラーには、なかなかProgram Changeがなかったので、この機能は大変ありがたい。

ただ、PADを叩いて、プログラム番号を1つ進むは出来るのだが、1つ戻るを押すと、一つ戻るわけではなく、128から127、126…と戻ってしまうのが難点。例えばプログラム番号が010の時に、1つ戻るを押していくと、128、127、126…と下がっていき、その時点で1つ進むを押すと、011になる。さらに1つ戻るを押すと125になるという、非常に面白いプログラムチェンジ方法だった。

最後に

Xjamは、見た目はシンプルでスタイリッシュだが、本格的なポリフォニックアフタータッチが出来る16個の超高感度PADと6個のエンドレス・エンコーダーノブが付いて、持ち運びも楽で、買いやすいお値段なのも好印象。いつでもどこでも持ち運んで、サっと楽曲制作に取り掛かれたり、ライブで使えたりする、小型で汎用性抜群のUSB MIDIパッドコントローラーだ。

たらま

音楽の"タノシイ"と"オモシロイ"ものを求めて、日々奮闘中。 仕事とプライベートの境が家族でもわからないと言われて、早10数年。