Albino-3 Legend Big World / DJ KIRA
今回、製品レビューを担当することになりました、DJ/トラックメーカーのDJ KIRAです。
僕なりの使い方になってしまいますが、できるだけわかりやすく解説していこうと思いますので、よろしくお願いいたします!
2006年Peter LinsenerとRop Papenのコラボレーションにより生み出された「Albino-3」が、最新PC及びMacとの互換性、VST3サポート等を携え2023年に「Albino-3 Legend」として生まれ変わりました。
筆者とAlbino-3
自分はまさに2006年頃に「Albino-3」を実装していました。人生で最初に買った記念すべきソフトシンセになります。
当時はProteus2000、Roland XV-5080、KORG TRITON RACK等の外部音源とKORG MS2000を中心としたシンセサイザーで曲を作っており、ソフトシンセがまだ革命的と感じられている時代でした。The Chemical BrothersやFatboy Slim、Propellerheads、Crystal Methodあたりのブレイクビーツ、Big Beatを作りたく、お世話になっている楽器屋のスタッフの方に相談し、激しくおススメされたのが「Battery3」と「Albino-3」でした。
ドラムンベースやJungleを作るのにも向いているとの事でこれはと思い購入し、大変重宝した記憶があります。
そんな思い入れのあるソフトシンセがまたまた強い縁があり、Legendの名を冠して再び舞い戻ってまいりました。「Albino-3」は、ある時からOSの互換性の問題で積めなくなっていましたので、感動の再会でした。
インストールし、起動してみるとそこにはとても見慣れたディスプレイ、、、操作感、、、ムネアツです!その当時より幾分マシなトラックを作れるようになったとは思うので、自分に最も多い発注パターンの「ダンサーからのダンストラックの依頼」をイメージし、「Albino-3 Legend」を中心にCUBASE13にてトラックメイキングしてみました。
現行の音像のものを作っていくことで、ソフトの実力をあらためて確認してみたく思いました。
トラックの構成
構成として、今時なエレクトロなブレイクビーツ~Jersey Club、Post EDM~ドリル、のような展開で、ダンスが付くイメージなので、色々な曲を繋げていくような割りとブツ切り感と、音ハメポイントを少し入れながら起承転結をつけて制作してみました。
“Albino-3 Big World” by DJ KIRA
各パートの解説
冒頭のセクション、アタマから鳴っている白玉のコードシンセはNavanaX presets内にある[Dig-E-Lead]。デフォルトでかかっているエフェクト1のChorus2を強めにし、エフェクト2にPhaserを入れ、StereoのノブをまわしMaxに設定。右上にあるFILTER1のcutoffを12時くらいの高さにし、広がりがありつつ攻撃的な音にしてみました。
ベースは、メインにSublab XL、サブで重ねる用にDigital Basses内にある[Dancy DigMe Bass]をReverbをインサートし使用。
ちょいちょい出てくるフィル的なシンセはNavanaX presetsの[These Amsterdams2]に、プラグインNicky Romero KICKSTART2でダッキングさせ、KNOCKで歪ませています。
ドラムはほぼSpliceから取ってきたもの、クラップにDC Snares、パーカッションのカバサはDrums and Percussion内にある[Cabasa Short 808]を使っています。
0’14~から入ってくるリードシンセは、コードを弾いているものと同じ[Dig-E-Lead]で、こちらはプリセットのまま使用。
0’27~のベースはSynth Basses1の[Fretless Albino Chorus]、これにもNicky Romero KICKSTART2をかけて使用、ポストEDM感を演出しています。
ベースはSynth Basses1の[RawSy Bass]に、Waves Renaissance Bassでローを増幅、オルガンベースっぽいものをSerumでレイヤーしています。
次の展開0’54~のアルペジオシンセは、Synth Leadsの[K-work Lead]にChorusをあて、キラキラさせ手弾きしています。
バッキングのシンセは2つ、メインはSynth Sounds1の[Big Modular Patching]、サブにSynth Sounds1の[Berlin Modular]。メインの質感にサブのアタックを足している感じで、双方大変良い音でとても気に入っております。
1’09~のセクション、シンセリードは今回一番迷い、Synth Leadsの[Sun Moogy]に。抜けの良さと今っぽいレトロ感が良い感じにはまったかなと。Dada LifeのSausage Fattnerでかなり歪ませ明るくしています。
コードシンセは、メインに0’54~引き続きSynth Sounds1の[Big Modular Patching]を。エフェクト3にPhaserを挿し、OSC2をF1に、FILTER1のcutoff、resをそれぞれ上げ、プラグインでサイドを持ち上げ、ド派手な感じに仕上げています。
サブにNexus4を使用。
ベースにはSynth Basses1の[Zink Bass]、ローのバランスがとっても良いです。Chorus2の量を減らして調整しています。
1’22~の最後のセクション、声のリードはサンプルの切り貼り。バッキングシンセはメインにSynth Sounds1の[Prophet Albino]をFaturatorで歪ませ、サイドを上げて輪郭を調整、サブにキラキラ成分としてNexus4の音源を使用しています。
ベースに、同じRob Papen社のSubBoomBass 2の、プリセット[bass-Push Da]を使用。流石のサブベースです。
色々なジャンルを切り替えて構成し、いわゆるダンサーのダンストラックっぽくなったかなと思います。普段ですとこの状態からダンサーのリクエストをフィードバックし、もっと声ネタなども使ってどんどん派手にしていくのですが、ソフトシンセを際立たせたいので少し脚色をマイナスにしています。
最後に
20年近い時を超えましたが、現代で使ってみても全く遜色のない音像に驚愕でした。構成やメロディ、グルーブと同じレベルで「音色」が決定的に作品を左右する昨今、使用するアイテムは本当に大事だと痛感します。
「Albino-3 Legend」はエレクトロやドラムンベースに特化したプリセットも多数搭載され、例えば今流行りのY2Kガラージ系等最先端のジャンルにも対応でき、様々な場面での使い方が予想できます。一画面内にすべての機能が収まっており、各部の使いやすさと非常に高い柔軟性、更に、今回は使用しませんでしたがプリセット自体を組み合わせることができるレイヤーシステムもあり、クリエイター必須のアイテムと言えるでしょう。
以前のレガシープリセットも読み込めますので、自分のように復活組の方もこれを機会に導入されてはいかがでしょうか!?
“Albino-3 Big World” by DJ KIRA 〜 .WAVバージョン(48 kHz/32 bit浮動小数点)
DJ KIRA

90年代ダンスに明け暮れクラブミュージック全般の虜に、10代後半にHIRO(ex ZOO, EXILE)に弟子入り、その後DJ活動なども経て、トラックメーカーの道へ。
DANCE MUSICを基盤としてCMや舞台、EXILEをはじめ様々なアーティストへ楽曲を提供。
DIGITAL ROCK UNIT「BOOBEE BROTHERS」、DJ MAKIDAIとのユニット「Sound Goes Around」 の名義も持つ。
DJ・作曲家・トラックメーカー・アレンジャー。
☆EXILE・PKCZ®の楽曲やリミックス、三代目 J SOUL BROTHERS・GENERATIONSやLDH所属のLIVEパフォーマンス曲、“武者修行”使用曲、舞台や映画、CM音楽まで幅広く手掛ける。DJ MAKIDAIのマニピュレーターとしても活動。