Rob Papen BLADE は、他のRobPapen シンセサイザーとは明らかに異なるサウンドの構築方法と、LFOでは再現不可能な動きをいとも簡単にサウンドに与えるXYパッドを備えたまったく新しいソフトウェア・シンセサイザーです。オーソドックスなサウンドからトリッキーなサウンドまで、非常にカバー範囲の広いBLADEの魅力を今回から数回に渡ってお伝えしていきます。楽曲に個性を加えたい、今の制作環境にマンネリを感じているという方には特にオススメしたい個性的な機能をご覧ください。
BLADEの心臓、HARMOLATOR
BLADEを起動すると、まず切れ味の良さそうな刃(BLADE)の画像と、画面中央の特徴的なXYパッドが目を惹きます。そのXY PADの左にそれとなく据えられたセクションがBLADEのサウンドメイクの要となるHARMOLATORセクションです。ここでBLADEのサウンドの基礎を作ります。
BLADEは一般的な「オシレーターでサイン波や矩形波を選択する」という操作ではなく、大雑把に言ってしまうとTIMBREというサウンドの基礎となるものを入れ替えて、そのTIMBREをどのように適用するかを決めてハーモニック量やサブオシレータ量を調整する……というとあまりにも大雑把なのですが、TIMBRE TYPE選んでTIMBREノブでハーモニック量(バランス)を調節するだけでもサウンドの変化を楽しめると思います。
ここで加算シンセシス方式の成り立ちは……というような難しい説明をするのも無粋なので、実際にシンプルなサウンドを例に音の変化を聴いてみてください。
例えばTIMBER TYPE 1を選択して、フィルターやエンベロープなどはすべてオフに、BLADEのサウンドの中で最もシンプルなサウンドのひとつと言えると思います。
あまりにもシンプル過ぎるのでうっすらとリバーブだけ当てていますが、このTIMBRE TYPE 1に含まれているサウンドの成分バランスをTIMBREノブで調整します。
TIMBREノブをA-HRMONIC側(右)に振り切ってみます。
オルガンのようなサウンドになりました。
逆にTIMBREノブをHRMONIC側(左)に振り切ってみます。
往年のテレビゲームを想像させるサウンドですね。
※それぞれのサウンドは実際には等しく合成されている状態よりも音量が小さくなるのでノーマライズをかけています
左右に振り切ったサウンドを聴いた後で初めのサウンドを聴いてみると、それぞれのサウンドが等しくブレンドされているのが判ります。
TIMBRE 1のTIMBERノブひとつとっても、BLADEで扱えるサウンドの幅の広さが感じられると思いますが……いかがでしょうか?
視覚的にサウンドを捉える
BLADEは一般的な減算方式とシンセサイザーとはサウンドの作成方法が異なるので慣れるまではイメージしているサウンドを即作成!というのは難しいかもしれません。逆に適当にいじってたら面白い音ができた!という機会は多いのですが、BLADEのHARMOLATORを使用する上で念頭においておきたいことが「サウンドを視覚的に捉える」という点です。
BLADEの画面中央下に表示されるマルチパネルでSPEC(スペクトル)を選択、サブメニューはHARMにしておくと、今現在のサウンドのスペクトル(サウンドを視覚化したもの)が表示されます。
BLADEのサウンドの基礎は「TIMBREというサウンドの基礎となるものを入れ替えて、そのTIMBREをどのように適用するかを決める」と書きました。TIMBERが決まったらどのようにサウンドを作成するかですが、文字で伝えるとこうなります。
Base
サウンドのベースとなる周波数を決めます。
サウンドの印象を決める部分と言えます。
Range
サウンドのベース周波数の周辺をどれだけ適用するかを決めます。
FilterでいうところのQと書くと判りやすいでしょうか。
Symmetry
サウンドのベースの中心から、高い周波数と低い周波数をそれぞれ削ります。
Even / Odd
現在のスペクトルから偶数部分、奇数部分をそれぞれ削ります。
偶数のボリュームを下げると矩形波のようなサウンドに近くなり、奇数のボリュームを下げるとノコギリ波のサウンドに近くなっていきます。
……と、文章にしてみてもサッパリなので、実際のスペクトルと音の変化を動画で見てください。
BLADEを使用しているとこのスペクトルの形とサウンドの関係がすぐにイメージできるようになります。するとBLADEのサウンドメイクの楽しさが急加速するのです。HARMOLATOR……不思議な機能です。
次回はもうひとつの目玉。
有機的なサウンドをいとも簡単に作り出す、XYパッドをご紹介します。
お楽しみに!