新しいノートFXデバイスを曲作りに活用する
第5回:Ricochet
バージョン4.1で新規追加されたノートFXデバイスを紹介する本連載ですが、今回はRicochetをメインに紹介しましょう。
他のノートFXデバイスとの組合せなども紹介しつつ、解説していきたいと思います。

Ricochetで得られる効果
Ricochetは、MIDIノートの演奏によってリトリガーされた位置を利用してパンニングや音色などを変化させることができるノートFXデバイスです。効果のイメージとしては、ちょうど自分で設定した形の部屋の中で壁に衝突して跳ね返り、あちこちに飛んでいくボールのようなサウンドとなります。部屋の形状を設定する際、部屋の形が非対称かつ多角形であるほど、その跳ね返り方は不規則な変化となるため、それに比例して得られるサウンドも複雑になってきます。
Ricochetを使用したトラック制作例
それでは最初にノートFXデバイスを使用しない状態のデモを聴いてみてください。
全部で5トラック使用してソングを作成していますが、パーカッションのパート(EM Bass Dholak Thom Full Hand Open Both Side Open Highのワンショットを使用したトラックと、Clap Legend 707のループを使用したトラック)以外のトラックでノートFXデバイスを使用しています。
まず、Polysynthのプリセット“Drrrty Magic Music Box”を使用したトラックではRicochetを使用しています。

Ricochetの特徴的なリピート効果の不規則性を更に強めるためにモジュレータのLFOを加え意図的にテンポがズレていく周期に設定し、更に前段にHumanizeを加えています。

Humanizeは、チャンス、タイミング、ベロシティなどのパラメータを設定し、演奏のランダマイズ効果が得られるため、同じフレーズでも少しずつ異なる演奏にすることができるノートFXデバイスです。
次にFM-4のプリセット“Namedatphone”を使用したトラックではQuantizeを使用してみました。

Quantizeは、多くのDAW上で編集を行う際に発音タイミングを補正する機能と名称こそ同じですが、ノートFXデバイスのQuantizeは機能的に少々異なります。 次の音が発音できるようになるまでの長さ(=クオンタイズする音符長)を設定し、意図的に演奏タイミングをズラす効果が得られます。どちらかというと打ち込んであるフレーズよりはMIDIキーボードなどを使用してリアルタイムで演奏する際に効果的なノートFXデバイスと言えます。
3トラックめのFM-4のプリセット“Blue Moon”のパートでは前回紹介したBendを使用してピッチベンド効果を加えました。

このようにデモのサウンドをビフォーアフターで聴き比べてみるとノートFXデバイスを加えたトラックの方がフレーズの動きも活性化しており、曲自体に動きが加わったものになっているのがおわかりになるでしょう。
さて、今回までのところで、バージョン4.1で新規追加されたノートFXデバイスについての解説は一区切りとなります。
次回以降はBitwig Studioの他の機能も交えて、色々なアプローチによる活用法を紹介していく予定です。こうご期待。