You are currently viewing Bitwig Studio “Note FX Spotlight” – vol.2

Bitwig Studio “Note FX Spotlight” – vol.2

新しいノートFXデバイスを曲作りに活用する

第2回:Strum

今回紹介するノートFXはStrumです。
先日のバージョン4.1.2アップデートによって追加されたパッケージOrchestral ToolsのOrchestral Stringsのプリセットサウンドを使用しつつ、紹介したいと思います。

図1:メインスクリーン画面

Strumで得られる効果

Strumについて解説する前に少々ギターの奏法について確認しておきましょう。
ギターの場合、和音を同時に慣らしても低い方の弦と高い方の弦では微妙に発音するタイミングが異なります。
いわゆるダウンストロークの場合には、低音の弦の方が先に発音し、アップストロークの場合には高音の弦の方が先に発音します。
Strumとは、簡単に言うとこのような効果が得られるノートFXデバイスです。全音符の白玉コードにStrumを加えるだけで、ギターのストロークのようなフレーズが得られます。

図2:Strumの全体像。ステップ数とアップ、ダウンの設定だけでも十分効果が得られる。

Strumを使用したトラック制作例

参考例としてBitwigに収録されているループ素材を使用しつつ、Orchestral ToolsのOrchestral Stringsのプリセットサウンド“Orchestral Strings Pizzicato”の音色で図のような和音を打ち込んでみました。

図3:Pizzicatoのトラックに打ち込んだMIDIノートはこのようになっている。

まずはノートFXデバイス割り当て前がどのような演奏になっているのかデモ音源を聴いてみてください。

このフレーズにStrumを加えてみましょう。

図4:ノートFXデバイスのStrumを追加している状態。

これによって打ち込んだ和音がアルペジオのようにバラけたフレーズになります。
オーソドックスなアプローチであれば、これでも十分効果は得られるのですが、Strumの効果を更に高めるために同じく新規追加された“Randomize”を加えてみましょう。

図5:更にノートFXデバイスのRandomizeをStrumの手前に追加している状態。

Randomizeは名前の通り、ピッチやパン、強弱などを不規則に変化させるノートFXデバイスです。これを加えることによって、オーソドックスな演奏が一気に現代音楽風のサウンドに変化します。
また、使用しているリズムループの方にもRandomizeを加えているので、一層現代音楽風なトラックに仕上がります。

図6:リズムトラックで使用しているインストゥルメント(Drum Machine)とノートFXデバイス(Randomize)。このリズムトラックは、ループ素材にクリップの“Brefoot Hats 01 C”を元にチョイ足しエディットでパターンを少し変えたものを使用し、そこにノートFXデバイスを追加して作成した。

シンプルにこの演奏を淡々とループさせているだけでも、変化に富んだトラックになっているのがわかると思います。

このようにノートFXデバイスは単体で使用するだけでも十分に効果が得られますが、複数のノートFXデバイスを組み合わせることによって、一層効果的なサウンドが得られます。
ぜひ積極的に複数のノートFXデバイスによる効果をいろいろ試してみてください。


Orchestral Strings

Bitwig Studioの新しいサウンドパッケージ「Orchestral Strings」は、革新的で表現豊かなオーケストラ音源のコレクションを数多く制作しているOrchestral Toolsの著名なクリエイターによる最高級の録音を収録しています。様々なアーティキュレーションとノートが収録されており、これらはすべてBitwig StudioのSamplerですぐに使用できるようにカテゴライズされ最適化されています。ベルリンの有名なTeldex Studioのスコアリング・ステージで録音されたこれらの豪華なサンプルは、Note FXやプロセッシングを使用した様々なクリエイティブ・プリセットにも組み込まれています。

Orchestral Stringsは、Bitwig Studio 4.1.2以降で提供されます(パッケージ > Partner Collection 内からダウンロード可能です)。是非この機会に最新バージョンをお試しください。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。