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Back To The Spectrasonics ~ Spectrasonics社製品の使用法を徹底チェック ~ vol.6

第6回:Omnisphereの各ページを深掘りする(その5:ARPページ)

今回から2回に渡ってフレーズ作りやパフォーマンスに役立つARPページとORBページを紹介したいと思います。

まずは様々なフレーズを演奏可能なアルペジエーター機能の設定ページであるARPページについて解説しましょう。

ARPページの概要

Omnisphereのアルペジエーターは、オーソドックスなコードアルペジオの上下行の演奏に加え、最大32ステップのパターンプログラマーやMIDIキャプチャ機能を装備しています。

図1:ARPページの全体像。32ステップのパターンプログラマーの設定がポイントとなる。

アルペジエーターは各パートに個別に用意されており、それぞれで独立したパターン設定が行えるため、1マルチあたりで最大8個のアルペジエーターが同時使用可能です。後述するSTACKモードとLIVEモードを使用したパフォーマンスを行う際などにも効果的に機能します。また、同社製品のStylus RMXのグルーヴ、あるいは任意のスタンダードMIDIファイルと同期させるGroove Lock機能も装備しています。

図2:Stylus RMXとのGroove Lockは、Omnisphereの黄色の枠線で囲んだ部分にStylus RMXのDIRECTORYページ、あるいはCHAOSページのMIDIファイルフィールドのいずれかよりドラッグするだけで行える。

アルペジオパターンの多種多様なプリセットパターンも用意されており、GUI右側上部のプリセットメニューをクリックするとリストが表示されます。

図3:黄色の枠線で囲んだ部分をクリックするとプリセットのリストが表示される。

図4:プリセットリストはこのように表示される。

パターンプログラマーの活用ポイント

Omnisphereのアルペジエーターを使いこなすにはパターンプログラマーの理解が重要ですが、ここでは設定ポイントをピックアップして紹介しましょう。

ステップ数の設定

最初にアルペジエーターのフレーズのステップ数を設定します。最大で32ステップまで設定できますが、設定の目安は次のように考えると良いでしょう。

Omnisphereのアルペジエーターのクロック設定が1/16で、ステップ数の設定値を16にすると、4/4拍子で1小節分のフレーズが作成できます。また、ステップ数の設定値が同じ16でもクロック設定が1/8の場合は4/4拍子で2小節分のフレーズとなります。

アルペジエーターのフレーズ作成においては、ループさせたいフレーズの長さを考慮しつつ、クロック設定とステップ数を設定していくのがポイントです。

デフォルト状態では図のような設定で表示されます。

図5:アルペジエーターページのデフォルト設定は図のようになっている。

ステップ数を増やすには図中の黄色の枠線で囲んだ部分をマウスでクリックしてホールドしたまま右方向へドラッグするとステップ数を増やすことができます。

図6:図はデフォルト状態から16ステップに増やした状態。

逆にステップ数を減らしたい場合には左方向へドラッグします。

各ステップのノート設定

各ステップで表示される水色の縦長の線はベロシティの大きさを表し、線の幅はノートのレングス(=音価)を表しています。その線をクリックしたまま上下にドラッグするとベロシティ値の調整が行え、上に行くほど大きな値となります。線の幅を調整したい場合にはシフトキーを押しながらマウスで左右にドラッグすると音価の調整ができます。

図7:図中①のように上下にマウスをドラッグするとベロシティ値の増減、②のように左右にマウスをドラッグするとレングスが調整可能。

Step Modifiers(ステップ・モディファイアー)の設定

各ステップのノート設定を行う水色の線の上の□部分には、Step Modifiers(以下、ステップ・モディファイアー)の設定が行えるようになっています。

図8:黄色の枠線で囲んだ部分をクリックするとStep Modifiersのメニューが表示されるので、設定したい効果を選択して割り当てる。

ステップ・モディファイアーはノートの発音設定などを行う機能で、以下の設定が行えます。

図9:Step Modifiersを作成したフレーズに実際にStep Modifiersの設定を行った状態の例。

  • Transpose
    入力されたノートのピッチを±2オクターブの範囲において半音単位で設定を行います。
  • Slide
    入力されたノートにTB-303スタイルのピッチスライド効果を付加します。
  • Chords
    設定されたステップでコードを演奏させることができます。
  • Hi-Low
    アルペジエーターモードを無視し、Highestでは常に保持されている最も高い音、Lowestでは常に保持されている最も低い音を再生します。
  • Step Dividers
    1個のステップを2個、3個、あるいは4個に均等分割し、同じノートを設定回数分発音します。
  • Strum
    ギターのストラム奏法のような演奏効果が作成できます。

パターンプログラマーでアルペジエーターの元となるフレーズが作成できたら、GUI上部左側にある各種設定や右側に並んでいる各種ノブを調整することで、様々な演奏バリエーションが得られます。

まずはステップ数の少ないシンプルなパターンを作成していろいろ試してみると良いでしょう。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。