第5回:Omnisphereの各ページを深掘りする(その4:FXページ)
今回はOmnisphereにおけるサウンドメイクでも重要なポイントとなるFXページを深掘りたいと思います。
FXページの概要
Omnisphereにおいては、音色を構成する各階層におけるエフェクトルーティング構造を知っておくとサウンドメイクがしやすくなります。
大まかに言うと、1個のパッチを構成するレイヤーレベルで付加するレイヤーFXラック、レイヤー共通のCOMMON FXラック、各レイヤーとセンド&リターンで使用するAUX FXラックがあります。
そして、マルチモードにおける8パート共通のMULTI FXラックにはセンドリターンで使用する4個のAUX FXラック、トータルエフェクトを設定する1個のMASTER FXラックが用意されています。
それぞれのFXラックは用途の違いはありますが、どのFXラックも最大で4個のエフェクトが追加でき、選択可能なエフェクトタイプも同じですので、設定自体は手順を押さえておけば容易にサウンドメイクが行えるでしょう。
参考までですが、使用しているコンピューターの動作環境によって異なるものの、8パートすべてパッチを割り当てたMULTIの設定の場合、最大で212個のエフェクトが使用できることになります。
パッチレベルでのエフェクト設定
まず、音色パッチを構成する各レイヤーはMAINページで設定される“シグナル・パス・モード”に応じて設定が異なります。
図1:シグナルパスはMAINページのGUIの左側中央付近に配置されている“SIGNAL PATH”でNormal、Sharedを設定する。
シグナル・パス・モードが“Normal”の場合、各レイヤーにはそれぞれで独立した4個のエフェクトを付加することができる各レイヤー用のFXラックと、
図2:レイヤーごとにエフェクト設定を行う各レイヤー用のFXラック。黄色の枠線で囲んだ部分がAUX FXラックへのセンドレベルを設定するスライダーとなっている。
4個のエフェクトを付加することができるレイヤー共通のCOMMON FXラック、
図3:パッチ内のレイヤー共通のCOMMON FXラック。レイヤー用のFXラック同様、黄色の枠線で囲んだ部分がAUX FXラックへのセンドレベルを設定するスライダーとなっている。
更に各レイヤーにセンドリターンで4個のエフェクトを付加できるAUX FXラックが用意されています。
図4:AUX FXラック。黄色の枠線で囲んだ部分でエフェクトリターンレベルを設定する。
そのため、1個のパッチあたり最大で24個のエフェクトを使用した非常に複雑かつ緻密なサウンドメイクが可能です。ただし、使用するエフェクトが多くなるほど、CPUへの負荷も大きくなりますので、注意が必要です。
シグナル・パス・モードが“Shared”の場合には、音色パッチ内の各レイヤーは単一のレイヤー用FXラックを共有して設定を行います。
図5:シグナルパスがSharedの場合のレイヤー用FXラック。Sharedの場合はGUI中のすべてのレイヤーボタンが点灯した状態になるので、シグナルパスの設定がどちらなのか識別する際の目安となる。
こちらの場合にはNormalの場合に比べてCPU負荷が少ない分、使用可能なエフェクト数は、1個のパッチあたり最大12個のエフェクト(レイヤーFXラック内で4個 + COMMON FXラックで4個 + AUX FXラックで4個)となります。
マルチモードでのエフェクト設定
マルチモードにおけるエフェクト設定を行う場合には、MIXER FXページでAUX1からAUX4と
図6:MIXER FXページのAUX FXラック。AUX1から4まであるが、すべて同様の仕様となっている。
MASTERのそれぞれのエフェクト設定を行い、
図7:MIXER FXページのMASTER FXラック。このラックは出力の最終段となるので、トータルコンプやトータルEQなどの設定や調整に使用すると良い。
MIXERページの各パートに用意されているAUXへのセンドレベルを調整して設定を行います。
図8:黄色の枠線で囲んだ部分がAUXへのセンドレベルを調整するノブ部分。図は1から4パートにAUX1のエフェクトを付加する設定を行った状態の例。
なお、MASTER FXラックはマルチのAux FXラックと出力Aを介してルーティングされるすべてのパートを処理するため、DAW上でパラ出力設定をしている場合などで出力BからIにパートを割り当てる場合はMASTER FXラックで処理されない点に注意しましょう。