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Meet The Grid – Bitwig Studio “POLY GRID”でドラムを作る!by Blacklolita Vol.2

Bitwig Studio “POLY GRID”でドラムを作る! Vol.2

by Blacklolita

まえがき

本連載では、Bitwig Studio3 から搭載された “THE GRID”というオープンなモジュラー環境を用いて、アーティスト自身が THE GRIDでどうやってサウンドメイキングをしていくのかを解説いたします。各回の最後には、アーティストが実際に作成したプロジェクトファイルもダウンロードできるようになっています。まずは、Bitwig Studioのデモバージョンをダウンロードして、連載と共にTHE GRIDを楽しんでください。

Bitwig Studioデモ版ダウンロード

Bitwig Studioのデモ版はこちらからダウンロードできます。

デモ版ではファイルの保存が行えませんが、すべての機能にアクセスが可能です。無限のシンセサイズを提供する、強力なGRIDをぜひご体験ください!


Blacklolitaです。普段はKYMOGRAPHというサンプルパックのサウンドデザイナーをしつつ、作曲家として活動しております。今回は全三回にわたり、Bitwig Studioに搭載された強力なセミモジュラーエンジンPOLY GRIDでドラムを自作して行く道のりをみなさんと一緒に歩んでいこうと思います。


Blacklolita

https://twitter.com/KymographCLROWN

サンプルパックブランド「KYMOGRAPH」のサウンドデザイナー。
皆様にシンセの魅力や使い方を知っていただければと思います。

今回は第二回ということで前回の作ったキックに合うようなClapサウンドを作っていきましょう。第一回を読んでいると理解もしやすい場所も多いかと思いますので是非第一回の記事「Bitwig Studio “POLY GRID”でドラムを作る!by Blacklolita(Vol.1)」もご覧ください。

POLYGRIDを立ち上げて、基本のオシレーターを配置する

前回と同様にBitwig Studioを起動し、BrowserにPOLY GRIDと入力してPOLY GRIDをInstrument Rackに立ち上げましょう。

前回は連載用にご用意したプリセットからオシレーターをいじっていきながら音を作っていきましたが、今回は一旦全部消しましょう。Gate In、Audio Outは残しておいてもOKです。

Fig.1

図をご覧ください。モジュールが一杯で目がくらみそうになりますが、順に読み解いていきましょう。色々複雑になっているプロジェクトも、理論的に説明できないものはないので落ち着いて少しずつ理解していく姿勢が大事です。音は左から右に流れていく構成になっていますので、左から順に解説していきたいと思います。

クラップの芯となる部分をノイズから作り出す

まず左の黄色い凸マークがGate In。前回も説明しましたが、Bitwig Studio側で入力しておいたMIDI信号に合わせてTriggerを結線した先に出力してくれます。これでMIDIノートに合わせてSawやSineなどの基本的なシンセのモジュールが音を出すわけですね。

前回同様Pitchも立ち上げてADエンベロープにアサインしています。外部から出力したPitchの信号に対し、時間的な変化をつけるという説明をしたと思います。今回も同様です。クラップのアタックの意図的な役割を担ってくれていますね。ADエンベロープの値は図のように設定しました。

Fig.2

そしてSineモジュール。今回はフルにパラメーターを振っていますね。Skew、Fold共にMAXに振り切っています。音階がないノイズを加工してクラップサウンドを作りたいと考えたので、とりあえずSineのパラメーターをMAX、ShaperモジュールのChebyshevをMAXの32に振り切っています。

現在のこの状態ではただのうるさいノイズですが、こちらをADSRなどのエンベロープを設定して、音を削っていくことで目的の音の形に近づけていきます。イメージとしては彫刻的な感じでしょうか。ノイズなどから作るときはこういった減算的な思考法で音作りに取り組むとより理解も早いかと思われます。

まずはADSRですね。

Fig.3

設定値は図のように設定しました。まずは音をこのように削っていきます。アタックは気持ち甘めです。Decayはキックのときと同じで歯切れよく316msに設定しています。

その右に結線しているのがCombフィルターですね。特にこのBitwig Studioの開発したPOLY GRIDのCombフィルターは歯切れがよく、今まで使ったものの中でもトップクラスに質がいいです。Combフィルターを使いたいがために立ち上げることもしばしばあります。

このCombフィルターですが、僕は有機的なニュアンスを音に付加したい時によく使います。

Cutoffの値を29.1Hz、Resonanceを42.9msに設定しています。聞いてみた感じだとほとんど違いはないけれども、音を大きくした時、コンプで持ち上げた時に細かなニュアンスがどう持ち上がってくるかというところで差が出て来るので僕は細かい設定にも気を配るようにしています。

その右にLow-pass LDフィルターを結線していますね。これは出過ぎた高域をEQ代わりとして抑えるために結線しています。極数は6dBのものを使用し、21.6kHz、Resonanceは0ms、NonlinearityをAsymmetricに設定しています。これでクラップのアタック部分ができあがりました。

クラップのリリースサウンドを作る

クラップのリリースサウンドを今度は作りましょう。今回は簡単で、ブラウザーのRandomタブからNoiseモジュールを選択し適当な場所に配置します。このモジュールはWhite/Pinkノイズを出力してくれるもので、音作りには欠かせない存在と言っても過言ではないでしょう。次回で解説するハイハットサウンドでも要所要所で活躍してくれる存在です。

Fig.4

先程Sineモジュールで作ったノイズとは違い、ホワイトノイズはサーッ…という甘く音程を感じさせない色のない音が特徴です。この色のなさというのが重要で、リリースノイズやスネア、FX等を作るときにもよく重宝される存在です。ありとあらゆる効果音として昔から使われてきました。このNoiseモジュールにADSRを結線し、時間的変化をつけていきましょう。

Fig.5

クラップのアタック部分に重ならないようアタックは若干遅めにしてあります。 Decayは553msで若干長めにとっています。これでリリースノイズの設定は以上です。 次はこの2つの音をmixさせていきましょう。

クラップの最終調整

Fig.6

先程作ったアタックとリリースノイズをMixerにインサートし、音量の調整を行いましょう。アタックとリリースの音量感が大事で、これが上手く行かないと後でどうやってもクラップっぽくなりません。いくら音作りを頑張っていても簡単なボリュームコントロールを疎かにすると、それっぽくなくなるというのがありがちなミスなので、シビアにコントロールしていきましょう。

Fig.7

その次にQuantizerを挿していますね。Quantizerはサンプル解像度を下げるモジュールなのですが、クラップの歯切れを良くするために結線しています。気持ちSustainもタイトになる感触があるのでよく挿していますね。その次にHigh-passを6 Poleで523Hzで結線しています。SuperLow等の除去のため必須で挿しています。あまり上を削りすぎてもクラップの芯が失われるため削りすぎないようにしましょう。

その次にMixerで纏めたシグナルに対してバスコントロール的なアプローチのADSRを最終段に挿していますね。

Fig.8

こちらはDecay長め、Sustainを22.0%残して、ほんの少しだけリリースタイムを0.01msとっていますね。最後にGainで18.1dB上げてメインとなるクラップがほとんど完成しました。

Clapをワイドに広げる

クラップの音がほとんど完成したところで、僕は最後の一つ手を加えます。

僕は良く音の定位的にキックがセンターに来て、その他の音は少しセンターからずらしたり、ワイドに逃したりして音のマスキングをパン振りを駆使してなるべく防止しています。なので今回のクラップもワイドな感じにどんどん降っていこうと思います。

ここで使うのがMixタブにあるStereo Mergeモジュールですね。LRとMid/Sideに入力信号を分割してくれる便利なモジュールです。これをLとRに結線してワイドに…と行きたいところですが、LとRにそのまま結線してしまうと同相同士のと音がLRに振られているため定位感は打ち消し合って結局センターに戻ってきてしまいます。そこでLもしくはRのどちらかに信号を遅らせるモジュールをアサインすることで、同窓同士の打ち消し合いを防ぎ、ワイドな音にすることが出来ます。

DelayタブからDelayモジュールを選択し今回はR側の信号に結線してみましょう。9.66msほどあれば打ち消しがおこらずワイドにクラップが振られるはずです。前回作ったキックと合わせてみても、だいぶドラムだけで空間が埋まってくるのではないでしょうか。こちらをさらにバスコントロールとしてGainを9.3dBあげてAudio Outに出力。これでクラップの完成です!

Fig.9

総括

いかがだったでしょうか?キックのみならずクラップもモジュールを駆使してオリジナルの音を作り出すことが出来ましたね。このように発想の転換や音響合成の知識等を読み解いていけばどんな音だって1から作れそうな気がしてきます。まだまだ知らない音もあるはずですし、皆様が次の世代の音を作り出していくパイオニア的な存在になるための一助となれば幸いです。次回は一区切りで第三回。ハイハットをイチから作っていくテクニックをご紹介できればと思います。それではまた次回にお会いしましょう。

今回作成したプロジェクトファイルとクラップ音のオーディオサンプルはこちら(↓)です。

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Bitwig Studio "POLY GRID"でドラムを作る!Vol.2/3・プロジェクトファイル 93.99 KB 79 downloads

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