シンセヒーローへの道 Vol.2

シンセヒーローへの道 Vol.2

もうすぐ2012年も終わりですね。みなさんにとって2012年はどんな1年でしたか? また、2013年はどんな1年にしようと思いますか?

僕は、自分のできることを精一杯頑張って、未来を変えていきたいです。具体的な目標の1つとして、「シンセヒーローへの道を読んで、シンセサイザーで音楽を作るようになりました!」と言ってくれる方が増えるよう、この連載を頑張ります!

そして、シンセヒーローへの道としては見逃せないニュースが年末にアナウンスされました。Studiologic(スタジオロジック)ブランドのSledge(スレッジ)が、2013年1月11日に発売決定したのです! ソフトシンセしか触ったことがない方にとっては、ハードウェアのシンセサイザーはとても新鮮に感じますよね。

そんなソフトシンセ世代へ向けて、記事の最後にほんの少しだけハードウェアの魅力について触れたいと思います。

では、シンセヒーローの道 Vol.2の始まりです。
今回の主役は、LFO!



LFOとは何者?

前回の記事で、減算合成方式のシンセサイザーの音作りとして、「オシレータで波形を生成し、フィルタで削る」といった考え方が基本とお伝えしました。今回ご紹介するLFOを理解するにあたって、この考え方は押さえておいてください。

では、LFOとは何でしょうか? LFOの正式名称は、Low Frequency Oscillator。低周波オシレータです。

ん? オシレータといえば、聞き覚えがありますね・・・そうです、LFOとは、オシレータと同じく、波形を生成する装置のことです。

では、オシレータとどう違うのでしょう? 波形を生成するといった点ではオシレータと同じですが、LFOで生成される波形は周波数が低すぎるため人間の耳には聴こえません。LFOで生成した低周波数の波形を、シンセサイザーの各機能に入力することにより、LFOは効果を発揮します。

LFO実践編

では、さっそくLFOを試してみましょう。今回、使用するソフトウェアは、Rob Papen(ロブパペン)社 「BLUE」です。BLUEの場合、LFOがどの機能に入力されているか、とても分かりやすく表示されます。

Rob Papen BLUE

この画像のように、何を使って(Source)、どのくらい(Amount)、どの機能を(Destination)変化させるかといったものが、一目で分かりますね。

では、LFOをかけていない元となる音源を聴いてください。インダストリアルロックの先駆者にリスペクトの意味を込めて、今回も凶暴な音色を作りました(笑)。

では、この音源にLFOで変化を加えます。LFOを全体のボリュームにかけてみると、、、

ボリュームの増減が繰り返しているのが分かるかと思います。なぜ、このような効果が発生するかは、LFOが発生させている波形をご覧ください。

LFOが発生させている波形

LFOで発生させたSine波を全体のボリュームに入力することにより、ボリュームが左の画像のように変化します。これが、LFOによる効果です。

そしてLFOは、周波数を変更することにより、かかり具合の早さが変更可能です。そのためBLUEでは、赤枠の部分のようにSpeedと表示されています。

Rob Papen BLUE

先ほどの音源のLFOの周波数を高くしてみます。LFOの波形は、このように変化します。

LFO波形

効果は歴然ですね。

今度は、周波数を低くしてみましょう。ここまでくれば、LFOの波形や音がどのように変化するか予想できるのではないでしょうか? シンセの構造を、深く理解し始めている証拠です。

fun_synhero_vol.2_05.jpg

いかがですか?
みなさんが予想した通りの音でしたか?

もうここまで理解すれば、LFOの基本は押さえたも同然です。LFOを様々なシンセの機能に入力して、効果を試してみてください!

Sledgeに問う。なぜ、ハードウェアシンセなのか!

それでは冒頭でもお伝えしたとおり、Studiologicブランド、Sledgeについて触れたいと思います。まずは、現在発表されているSledgeの情報をご一読ください。

Studiologic Sledge正面

ここで、ハードウェア製品の利点について考えてみたいと思います。

昨今は、ソフトウェアの発展には目を見張るものがありますね。先ほどご紹介したBLUEは、「BLUEさえあればどんな音でも作れてしまう」と言い切ってしまいたいくらい、様々な音が作れます。それは、機能に柔軟性があるからです。LFOに注目してみても、BLUEは様々な機能にLFOを入力することができます。SledgeだとLFOの入力先は固定されています。

この点だけ見てしまうと、ハードウェア製品はソフトウェア製品に劣っているように感じてしまいます。しかし、限られた機能ということは、得意なジャンルに特化した楽器ということです。

ギターを例にしてみると、ヘビーメタルサウンドに特化したギター、パンクロックサウンドに最適なギターなどがありますよね。そしてこういったギターは使い手が限られるにも関わらず、決してなくなりません。万能型は好かれますが、専門型は愛されます。

Sledge 目立つ黄色いボディ

▶ 目立つ黄色いボディ

Sledgeに話を戻しますが、Sledgeはまさに「アナログシンセサイザー」といった音です。基本的な機能以外は搭載されていないため、オーソドックスなアナログシンセサイザーサウンドに特化した楽器といえます。

Sledgeの情報をご一読いただいた後で、Sledgeの印象として何が強く残っていますか? 黄色いボディではありませんか?

Sledgeは、楽器です。楽器は音も大事ですが、見た目はもっと大事だと僕は思います! ステージ上で演奏する見た目といった意味もありますが、やはり自分が愛せる見た目でなければ、モチベーションが上がりませんよね。

また、Sledgeには数々のノブが搭載されています。「シンセなんだから、当たり前じゃないか」という声も聞こえてきそうですが、目の前にノブがあるということは、数々のノブを同時にコントロールできます。

Sledge コントロール部分

▶ 使いやすいノブ配置

レゾナンスとカットオフを同時にコントロールしたり、LFOの周波数を高くしながら、オシレータのピッチを微妙に変化させてみたりと、まさに直感的に音色作りが可能です。やはり、目の前にノブが実際にあると、音作りのスピードが変わってくるんですね。

そして、ハードウェアシンセサイザーが愛されるもう1つの特長として、ハードウェアシンセサイザーは、オケに埋もれない前に出てくる音が挙げられると思います。僕は、ここがハードウェアシンセサイザーの最大の長所だと思います。

ジャンルにもよりますが、昨今の楽曲は複雑さを増し、それに伴いトラック数が増加の傾向にあります。100トラック以上の楽曲が当たり前になっている今、ソフトウェアシンセサイザーのそのままの音では、周りの音に埋もれてしまう場合があり、音を前に出すために、いろいろな工夫を施さなければなりません。

しかし、ハードウェアシンセサイザーは、オケに埋もれない前に出てくる音といわれています。そのため、ソフトウェアシンセサイザーで打ち込んだ音を、最後にハードウェアシンセサイザーの音に差し替えるといったことが行われています。ハードウェアシンセサイザーは楽器ですので、音楽家から愛させる要因はやはり音にあります!

と、ここまでSledgeを通してハードウェア製品の魅力について触れてみました。ソフトウェア製品しか触れたことがないという方も、ハードウェア製品の魅力が少しでも伝わったでしょうか?

あとは、お店で実際にSledgeのノブを触って音作りを行ってみてください。ノブを回して音を作っていく快感は、やはりハードウェア製品に限ります。

次回:シンセヒーローへの道 Vol.3