シンセヒーローへの道 Vol.1

シンセヒーローへの道 Vol.1

みなさんはどんなジャンルの音楽が好きですか?

僕は、ロックが大好きです。お気に入りのバンドはNINE INCH NAILS、THE MAD CAPSULE MARKETS、MINISTRY、WHITE ZOMBIEなどです。いま挙げたバンドの共通点としては、生楽器以外の音が収録されていることです。もっというと、シンセサイザーが楽曲の中で使われています。

僕のシンセサイザーへのイメージは、激しくないというか、ロックとは相反するものだと思っていました。しかし、THE MAD CAPSULE MARKETSを初めて耳にしたとき、この間違った考えが吹き飛びました! シンセサイザーを使って、凶暴な音を操る上田剛士さんを初めて観たときも、「自分もシンセサイザーを使いたい!」と思いました。ギター少年がシンセサイザーに出会った瞬間です(笑)。

現在の音楽では、様々なジャンルでシンセサイザーが使用されていますね。シンセのノブを操作して、自分だけの音色を生み出したいという想いはみなさん感じているはず! しかし、いくつもノブやボタンが並んでいるシンセサイザーの外観には、壁を感じてしまいますよね。

そこで、今回から数回にわたり、シンセサイザーの音作りをご紹介していきます。今回は、Rob Papen社のPREDATORを使います。シンセのことが全く分からないという方でも楽しく、なおかつ分かりやすい内容を心がけますので、ぜひともこの機会に、シンセヒーローへの第一歩を踏み出しましょう!


PREDATORのおさらい

シンセサイザーには、様々なタイプのシンセサイズ方式があります。FMシンセ、PCMシンセなどは聞いたことがあるのではないでしょうか。その中でもっともポピュラーなタイプが、減算合成方式です。今回、PREDATORを使用する理由も、この減算合成方式が採用されているからです。

PREDATORの起動方法、減算合成方式、オシレータについては、PREDATORの連載記事をご一読ください。

今回の主役「フィルタ」

PREDATOR連載記事でもご説明しましたが、減算合成方式は「オシレータで波形を生成し、フィルタで削る」といった考え方が音作りの基本です。オシレータについてはPREDATOR連載記事をご参照いただき、今回はフィルタに焦点を当てます。

はい、このフィルタですが、減算合成方式の音作りにおいて、オシレータと合わせて音作りの要と言えます! 音作りを料理に例えると、オシレータが食材で、フィルタが包丁です。どちらも、キレ味が重要です!

フィルタで重要な機能

では、PREDATORのフィルタパネルをご覧ください。

predatroフィルタパネル

たくさんノブがついていて、難しく感じますね。しかし、1つ1つの機能を確認していけば、決して難解な機能ではありません。

まず、フィルタで重要な機能として、カットオフ、レゾナンスがあります。PREDATORでは、CUTOFF、Qと表示されています。

これらの説明の前に、まずフィルタとは何でしょう? フィルタと聞いて、エアコンのフィルタを思い浮かべる人もいらっしゃるのでは? 僕は、思い浮かびました(笑)エアコンのフィルタは、ホコリを除去します。不必要なものを、取り除いていますね。

シンセのフィルタも、考え方は同じです。ただ、取り除くものは、音の成分である周波数です。高い周波数を取り除けば、音はこもって聞こえ、低い周波数を取り除けば、音はすっきりします。ここで重要になってくるのがどの周波数から取り除くか?ということです。この設定を決めるのが、カットオフです。正式名称は、カットオフ周波数。

では、音にはどのようにカットオフが反映されるか実際にご確認ください。まずは、フィルタをかけていない音源を聴いてください。せっかくなので、凶暴な音色を作ってみました(笑)。

Predator カットオフHighPass

▶ HighPass

この音源にフィルタをかけてみます。以下の音源は、始めはフィルタが機能していない状態から、どんどん高い周波数を削っていきます。このとき、FilterのModeは、24dB LowPassに設定しました。このモードは名前の通り、低い周波数は通して、高い周波数を削ります。ほとんどのシンセの場合、Filter Modeで高い周波数から削るのか、低い周波数から削るのかを設定します。

Predator カットオフLowPass

▶ LowPass

名称はLowPass、HighPassです。LPやHPと省略されている場合もあります。

音がこもったり、明るくなったりと変化していますね。

カットオフと同じくらい大切なものが、レゾナンスです。PREDATORでは、Qと表示されています。このレゾナンス値を上げていくと、カットオフで設定した付近の周波数を強調します。そのため、カットオフで設定した値によって、レゾナンスの効果が変わってきます。相互関係になっているんですね。

以上のことを踏まえたうえで、次の音源を聴いてください。先ほどの音源に、レゾナンスをかけてみました。

ちょうど、カットオフ値が変化する部分で、音が変化していますよね。これが、レゾナンスの効果です。

以上が、カットオフとレゾナンス機能です。1つ1つの機能としては、単純ですよね! しかし、これらを組み合わせることにより、複雑な音色を生み出すことが可能です。

ここまで、オシレータとフィルタについてご案内してきましたが、この2つの機能はシンセサイザーの中でもかなり重要な機能です。裏を返せば、オシレータとフィルタを理解さえすれば、シンセサイザーの基本は押さえたようなもの。かなり強引な言い方をすれば、オシレータとフィルタ以外は、この2つの機能を様々な形で変化させるための機能です。

次回は、変化を加える機能としての代表格、LFOをご紹介します。