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メルドーとオッターのコラボレーション

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今回は以前にご紹介をさせていただいたブラッド・メルドーについて再度取り上げたいと思います。最近立て続けにCDをリリースし続けているメルドーですが、この中でも今回取り上げたいのは、メゾ・ソプラノ歌手であるアンネ・ゾフィー・フォン・オッターとのコラボレーションです。ジャズピアニストとクラシック歌手というジャンルの垣根を超えたコラボで、メルドーが切り開いた独特な世界をご堪能ください。

■ ふたりのコラボレーション

メルドーについては以前ロマン主義とメルドーでご紹介しました。今回はオッターについてご紹介してみたいと思います。

アンネ・ゾフィー・フォン・オッターはストックホルム生まれのスウェーデン人のメゾ・ソプラノ歌手で、クラシック分野の音楽家の中では非常に評価が高いアーティストです。彼女はクラシックの中でも人気のレパートリーだけでなく、取り上げることが少ない作曲家を積極的に取り上げています。特にバッハ、モンティヴェルディなどの他、ロマン派、現代曲など幅広いレパートリーを持っています。

今回メルドーとオッターがコラボレーションしたアルバムは「Love Songs」という名前で、その名の通り全体にわたりいわゆるロマンティシズムにあふれたアルバムとなっています。CD2枚組のアルバムですが、1枚目は全曲メルドーによるオッターのために作曲された曲で、クラシック寄りの曲となっています。2枚目は、打って変わって、フランスのシャンソンやビートルズなどを取り上げています。

その中でも私が特に気に入っているのがメルドー作曲による1枚目の「Dreams」という曲です。この曲は大海に揺れ動くようなダイナミックな曲で、初めて聞いたときは完全に心を奪われてしまいました。

オッターによる歌声が響き渡ると共に、それを受けて後半に流れるメルドーのダイナミックなピアノがこの曲の大きな魅力となっています。メルドー特有の形式と破壊の連続が、非常にスリリングな体験を引き出してくれます。

2枚目のアルバムの中では、レオ・フェレの「時の流れに(Avec le temps)」が素晴らしいです。この曲の選曲はメルドーによるものだったらしく、オッターもこれを機にレオ・フェレの音楽を良く聞くようになったとのことです。暗く沈み込むような音楽ですが、それだけに心に染み入る曲です。他の曲も素晴らしい曲が多いので、ご興味のある方は是非聞いてみてください!

■ オッターのインタビュー

さて、彼らはお互いに異なる分野のアーティストですが、考えていることは共通しているようです。以下にオッターのインタビューを載せます。

内容を以下に記載させていただきます。

「ブラッド・メルドーと私は、どちらもあらゆる分野の音楽が好きなミュージシャンで、彼はジャズばかりをやるのは好きではなく、私はオペラで他の色々なことをやってきました。過去20年間の中で、クラシックと他の音楽の垣根はなくなってきたと言っていいでしょう。とはいえ、こういう活動は依然としてリスクを伴うものです。こうした活動を行うアーティストは、自分のやっていることに疑念がわいてきたりして、やはりやるべきではなかったとか、自分の得意分野に戻った方がいいだろうと考えたりします」

「私は今回のアルバムが本当に好きです。今後何年もこれらの曲を取り上げいくこともあるでしょう。その他は、クラシック音楽のレパートリー、歌曲など、いつも通りの仕事を続けていきます」

確かにオッターも言うように、こうしたクロスオーバー的な活動はリスクを伴うものです。こうした活動を行ってうまくいくものとそうでないものがある。ですが、うまくいった場合には、新たな音楽分野の兆しとなり得るでしょう。

もう1つ、メルドーとオッターとの出会い、そしてメルドーについての印象についてのインタビューがありましたので、掲載させていただきます。

「ブラッド・メルドーのことについては、初めてラジオで彼の曲を聞いたときから知っていました。その後、彼のCDを買い、彼の演奏には魅力があって、叙情的なのが分かりました。彼のスタイルがどんな感じのものなのかは説明が難しいですが、いずれにしても彼は素晴らしいアーティストであることに間違いありません。その後、彼がルネ・フレミングとコラボレーションを行ったことを知り、彼がそこまで歌曲に対して興味がないわけではないことを知りました。カーネギーホールからの素晴らしい仲介をいただいたおかげで、ブラッドにアプローチして、私とコラボレーションができないかと彼に聞くことができました。ニューヨークで会うことになり、どんな歌曲にしていくべきかについて話し合いました。その後、彼からアルバムで使う詩を送ってもらったりして、その後、2月に5つの曲を書き上げ、その後さらに2曲を追加し、いくつかはサラ・ティーズデールの詩を採用しました」

「今後のコンサートで彼はクラシックの曲を何曲か演奏します。私たちはシュトラウス、ブラームス、シベリウスを演奏します。彼は本当に素晴らしい演奏してくれます。何回かリハーサルをしたんですけど、何年もこれらの曲を演奏をしてきた人みたいで驚きました。彼の演奏技術だけでなく、彼がどれほど素晴らしいミュージシャンであるかが分かりました。また彼がいかに良く相手の声を聞いているかが分かりました。というのも、歌手と演奏する際は、相手の歌うのを聞かないで、単純に音楽を見て、二人がやっていることを考えているだけでは駄目で、相手の声をしっかりと聞かなければなりません。そして彼はそれができるのです」

最後に、メルドーと彼の奥さんであるフルーリーンによるライブ演奏を聞いていただきましょう。

この曲はオッターとのアルバムにも入っているマクサンスの歌です。1:50あたりから始まるメルドーのピアノ・ソロパートが実にいいです。もはやこれはジャズでもクラシックでもシャンソンでもない、メルドーの新たな境地です。タペストリーのような旋律の織りなしは、常にポリフォニックな音楽を作り上げてきたメルドー独特の世界と言えるでしょう。

歌っているフルーリーンも聞き惚れている感じが伝わってきます。